●「続・知られざる日豪関係」(894)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
  “東京急行”を撃滅せよ 


 そのころ北西三〇〇マイルの場所で戦局は大きく動こうとしていた。
 南ブーゲンビル、チョイセル、ベララベラの監視員たちは、ショートランドとガダルカナルの間を往復する“東京急行”がスロットを下りはじめたのを、先を争って報告していた。
 こうした通信は目視した時から五分以内にKEN局に届き、次の五分以内に航空司令部に届くのが珍しくなかった。
 時間の遅れが最小限まで省略されたことで、カクタス航空隊は夕闇が駆逐艦を隠してしまう前に強打をあびせられるようになってきた。
 “東京急行”の失敗が増加したので、山本提督は補給の流れを確保するため絶望的な手段に訴えるほかなくなった。