● 作家の描いた「特殊潜航艇」(53)

 
日本海海戦で大捷を博した元帥・東郷平八郎が、私の憧れの対象であった。
 艦隊をひきいて敵と決戦するのが私の夢であったが、海軍兵学校を卒業する頃から、飛行機の操縦を志願するようになった。
 私が考えていたよりも日米の開戦は早く、私は艦隊をひきいて対決する提督としてではなく、一青年飛行将校として空中戦闘に参加することになった。
 しかし、それはそれなりに、私としては満足であった。
 間もなく新聞で、真珠湾の戦果が報道され、五隻の特殊潜航艇が港内に潜入して、米艦を雷撃した旨が発表された。」