2006-01-01から1ヶ月間の記事一覧

  ピック・アップで助け合い(2)

メルボルンの美しさの一つに、「雲」がある。午後から、黒いと言うよりは濃い青みがかった雲が広がったかと思うと、アッという間に大粒の雨が降り出し、ごていねいなことに、豪快な稲妻とカミナリ、さらにはヒョウまで降ってくる。だが、今日は雨は降ってい…

  ピック・アップで助け合い(1)

私は、夕方のメルボルンのシティ(中心街)を散歩するのが大好きだ。 東京の騒々しさが体に染みついているのだろう。この国での毎日は、あまりにも静か過ぎて、落ち着けない気分になることがある。馬鹿げた話だが、そんなときには、知らず知らずのうちに「騒…

  社会生活(11)

極端に言えば、新聞(活字)に彩りを添えるビキニ姿の美女の写真が違うぐらいで、肝心の記事の方は、朝刊で読んだニュ−スと同じ内容が、夕刊専門紙に載っていることも多い。 見方によれば、過剰な情報を提供することによって、「人々を混乱させたくない」と…

  社会生活(10)

この国の市民運動を通じて意外に思われたのは、マスコミがリーダー・シップを発揮することだ。公害や物価、交通問題、そして助け合いなど、市民の生活と密接に関係する問題については、率先して行動するのだ。 「外国から輸入された洗剤が、人体に影響を与え…

  社会生活(9)

すっかり当惑している様子の親友を、これ以上困らせるのはやめた。 彼の表情には、ジョークを言うときのあのいたずらっぽい笑顔も、何にでも興味を示す私に誠実に答えてくれるときの真剣なまなざしもなく、ただオロオロと戸惑いを見せていた。 この“不買運動…

  社会生活(8)

製薬会社のあるイギリス国内の動きに呼応するかのように、オーストラリアでも、この会社が販売している食料品とスコッチ・ウイスキーの不買運動が大規模に展開された。 私は、いつもお酒を買っている食料品店に、ウイスキーを買いに出かけた。 ここの若主人…

  社会生活(7)

いつもは大勢の客で混雑する当のス−パー・マ−ケットにほとんど人影がなかったから、この不買運動はかなり徹底していたようだ。 「アメリカ系のス−パー・マ−ケットは、どの店も生鮮食料品の値段を妥当な線にまで引き下げた」。二日後の新聞は、こう伝えた。 …

  社会生活(6)

両方のス−パーの値段を比較した一覧表を示しながら、とうとうと説明し始めた。 「営業妨害で、訴えられたりはしないのだろうか?」。私は、一瞬そう思った。 同時に、彼女たちの話を聞きながら、その日の朝刊のことを思い出していた。 『今朝の新聞に、豪雨…

  社会生活(5)

そんなある日、いつも利用しているス−パー・マーケットに行くと、数人のおばさんが入り口をふさぐようにたむろしていた。ス−パーの入り口のドアには、何やら書かれたビラが張ってある。 この日、我が家では、パーティーを開く予定があったので、買い物はなる…

  社会生活(4)

台風に伴う集中豪雨で、メルボルンとその近郊が大洪水に見舞われたことがある。 メルボルンの目抜き通りに“川”が出現して濁流が渦巻き、市民を驚かせた。私の勤務先のビルでも、“雨どい”が豪雨を裁ききれずに天井から雨漏りし始め、大騒ぎとなった。雨水がオ…

  社会生活(3)

シドニ−のあるニュ−・サウス・ウエルズ州やブリズベンのあるクインズランド州では、ラグビーが盛んだ。 これに対し、オ−ストラリアン・ル−ルのフットボール(オーストラリア方式のフットボール)は、メルボルンのあるウ゛ィクトリア州やパ−スを首都とする西…

  社会生活(2)

それぞれの州は、「独立した国家」と見なしてもよさそうだ。 現に、鉱物資源に恵まれて財政豊かな西オ−ストラリア州では、「オ−ストラリアから独立しよう」という運動が真剣に進められている。 暗雲低く立ち込めたクインズランド州の首都・ブリズベンを飛び…

  社会生活(1)

これまで述べたように、オーストラリアでは、都市のたたずまいからビールのアルコ−ルの濃度に至るまで、州ごとに違う。 大きなビルが次々と建設されて「世界三大美港」の面影を失いつつあるシドニ−に比べ、メルボルンには 古くからの建物が立ち並び、市電(…

 「コミュニティ−のル−ル」のさらに続き

なぜなら、オ−ストラリアの一部で言われている次のような俗説? を説く回答にはなっていないからだ。 「1920年代までは中国人の黄色い流民が脅威だったが、それが1940年代は日本人に代わり、現代ではインドネシア人になっただけだ」と、一般に言われ…

 「コミュニティ−のル−ル」の続きの続き

「破ろうとする人間がいるからこそ、厳しいル−ルが必要なのだ」と、彼は力説する。 かつて、1850年代のゴ−ルド・ラッシュのころ、ウ゛ィクトリア州の金山だけで、2万5千人もの中国人労働者が働いていた時代があった。彼ら中国人は、当時の慣例(習慣)…

 「コミュニティ−のル−ル」の続き

それも、自分の子だけでなく、“見ず知らずの他人の子どもに対しても”である。 私には、とても真似のできない相談だ。 私の素朴な驚きに対して、オ−ストラリアの友人が「これには、次のような背景がある」と、次のように解説? してくれた。 この国を形成する…

  コミュニティ−のル−ル

子どもたちが、「決められたことをきちんと守る習慣」。以前、「国を挙げて」と書いたように、これを支えているのは地域社会であり、“社会全体”なのだ。 学校の中であろうが外であろうが、「いつ、いかなるところ」でも、ル−ルを守らない子どもは、仲間のみ…

  人間教育(9) 

「うん、それはそうだけど・・・」。彼の鋭い質問に、一瞬たじろぐ。彼は続ける。 「親は、生きている限り、自分の子どものしたことの責任を問われる恐れがあるというわけだ。たとえ、子どもが成人したあとでもね。言いかえれば、子どもを正しく育て上げる責…

  人間教育(8) 

「この事件の犯人は、成人しているはずだよね!」 「そう。確か彼は24歳だから、とっくに成人しているよ」 「じゃあ、どうして彼の父親が責任を取らなければならないんだい?」 当時、この事件はオーストラリアでも詳細に伝えられていた。少し間を置いて、…

  人間教育(7) 

とにかく、地域ぐるみで、いや国を挙げて、みんなが、次の世代を担う子どもたちのために、生きて行く上で必要なこと、大切なこと、守るべきことを機会あるごとに教えている。 そうは言っても、成人して一たび大人の仲間入りをしてしまったら、人間教育をして…

  人間教育(6) 

この旅で初めて出会った親友の弟も、両親と同様に人間的な魅力にあふれる人物だった。 彼らは、年老いた両親のために、パ−ス市内で最高と言われる病院の一番眺めのよい部屋に、「いつでも入院できるよう」予約しているほど優しい兄弟だ。 私からみれば、孫の…

  人間教育(5) 

親友の勧めもあって、大陸横断列車で西オ−ストラリア州のパ−スに住む彼の両親の元を訪れたことがある。 私たちの案内役を引き受けてくれたご両親が、道すがらこんな話をしていた。 「今年の夏休みには、孫のロビン(親友の弟の娘)を連れて、シドニ−まで汽車…

  人間教育(4) 

念のため、家に残された二人の子どもたちについても聞いてみた。 「長男と長女も、次男と同じように、旅行に連れて行ったの?」 「もちろんさ。それぞれ別々に、やはり一週間ほど一緒に旅行したよ。 今度の春休みには、長女はシドニ−にいる私の友人の家に飛…

  人間教育(3) 

「彼は、ずいぶん変わったね。あなたの言ってたように、すっかり大人びた感じになった」 この次男が、なぜ“いい子になったか”を解く鍵は、「一週間の自動車旅行」にあるのは言うまでもない。 根掘り葉掘り尋ねてみると、「この一週間、自分たちと行動を共に…

  人間教育(2) 

時には、おもちゃを巡って、私の息子と熱い戦い? にまで発展することもあったのだが、“旅行後”は、そういうことは一切なくなった。 それどころか、息子の“挑発”にも、まったく応じようとしないのだ。 息子は、どちらかというと、彼の兄である長男の方と気が…

  人間教育(1) 

親友の次男は、いかにも末っ子らしく、甘えん坊でわがままな一面がある。長女と長男がとてもいい子だけに、彼は弁護士一家の“問題児”のようにも思えた。 事実、両親や姉、兄たちも、次男がぐずり出すと「また、彼の病気が始まった。仕方ない」というような態…

  子どもの生活時間(5) 

彼女は、両手でそっとドアを締めながら、 「よく寝ているでしょう? こういう賑やかさには十分慣れていますから、大丈夫、心配要りませんよ」 「慣れている」というか、「よく訓練されている」いうか、隣の部屋のやかましさがモロに伝わってくるのに、ジェレ…

  子どもの生活時間(4) 

そんな夜でも、子どもたちは、いつものようにきちんと午後8時には就寝しなければならない。だから、子どもたちにとっては、「受難の一夜」となる。 パ−ティ−の主であるジョ−ジの長男・ジェレミイの場合も、正にそうだった。不幸なことに、彼の寝室は、客の…

  子どもの生活時間(3) 

この国では、家に帰る時間に限らず、就寝時間などもきちんと定められており、子どもたちは、夜8時にベッドに就くことになっている。 時間になると、テレビでも、「お休みの時間ですよ」と、子どもたちに呼びかける。(“全員集合”と叫ぶどこかの国とは大違い…

  子どもの生活時間(2) 

彼は、どんなに遊びに熱中していても、目覚まし時計が鳴り出すと、「ではまた」と言うなり、公園を挟んだ隣の自宅に向かって走り出す。 注意していると、私の息子が彼の家に遊びに行くときにも、必ず5時過ぎには帰ってくる。休日の前日などは、夕食をご馳走…