2008-10-01から1ヶ月間の記事一覧
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 四月二一日になってクレメンズは士気低下の問題をきわめてイギリス的な方法で処理した。 クリケットの試合を開催したのである。 一方、一八マイル西方の…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き アオラにある大きなパンヤンの樹頂に設けた見張所で、クレメンズは日本軍の上陸が始まるまで何日の余裕があるだろうかと考えこんでいた。 島にいた三人の…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き だが、これ以上ぐずぐずしてはおれなかった。 三月二四日、ドン・マクファランはクレメンズやヘイと一緒にラボロへ行き、大急ぎで無線機を組み立て、アン…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き そこからは沿岸の平地とはるか沖合まで一望の下に見渡すことができた。 クレメンズが東方を見張っているので、彼らは島の中央部を担任したわけである。 さ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 多くの監視員たちとちがって、彼はその土地に何も経験がなかったが、島では古顔のベランデ農園支配人K・D・ヘイの保護下に入る便宜を得た。 頑固で独立心…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き さらにずっと西の方に三人目の監視員であるF・アシュトロン・ローズがいたが、彼はラボロにあるバーンズ会社のコプラ農園支配人だった。 ずんぐりした体つ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 彼はソロモン地域には携帶無線機のステーションを八ヵ所開設したが、そのうち六つは直接日本軍の予想進路上にあった。 ブーゲンビル島に二つ、中部ソロモ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 三月、日本軍はソロモン群島へと動きはじめた。 初期の進攻に二、三週間しかかからなかったので今度の動きは予想より少し遅れてはいたが、結局は前回の攻…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き それはこの大波の通り道にいた監視員にとっては苦難の日々であった。 ニューブリテン島にいたキース・マッカーシーは間一髪のところで脱出した。 ニッサン…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 通信文を送るために、フェルトは<プレイフェア・コード>と呼ばれる簡単な暗号を各地の監視員たちに教えたが、それは必要なかぎ語(キー・ワード)を並べ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き すべてのステーションは携帶無線機を備えていたが、これは音声でも電鍵でも通信できる優秀な機械でバッテリ―で動き、音声で四〇〇マイル、電鍵だと六〇〇…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 彼は南太平洋の島々と住民たちを隅々まで知っており、また彼らからも十分な信頼を受けていた。 フェルトは、これらの島々がオーストラリアを囲む”防衛(…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 部長のR・B・M・ロング中佐は気さくな職業士官で、親しみやすい風貌に似合わず、すばらしい頭脳と政治的かけひきにたけた手腕の持主であった。 彼は沿岸監…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 第一次大戦後、オーストラリア海軍によって育成されたこの業務は、戦時に際して広大な無防備の沿岸に監視網を設けるのを目的としていた。 その地域はしだ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き クレメンズの到着はホートンと補佐官のヘンリー・ジョスリンには神の使者とも思われた。 二人は早く島をはなれて軍務につきたいと願っていたからである。 …
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き いま彼はツラギに戻り、次の任務を待っていた。 ウィリアム・シドニー・マーチャントという初老の行政長官は、すっかりうろたえてクレメンズに北西部のギ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 誰もがこの島を去ろうとしている時に、一人だけ到来客になるのは、マーティン・クレメンズと名乗るこの男をいい気分にさせたようだ。 彼はドラマティック…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 飛行艇が去り、モリンダ号がやっと係留された直後は大さわぎとなった。 午後いっぱい、船長が救命ボートの調達や切符のことで気をもんでいる間に、避難者…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き こうした絶望的情勢の中で、モリンダ号が二月八日オーストラリアに向けて最後の航海に出るという噂が広まった。 おびえた入植者たちは、財産を放棄してこ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き わたしはここが真に生きかつ学びうる場所であり、 すべてが風変わりな場所であること、そして人が実 力、勇気、進取の気性、知性によってのみ成功する 未…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き なかでもチョイセル島はおそらく世界中で外界の人間がもっとも寄りつかなかった島の一つであったろう。 しかし一面からいうと、それは入植者たちの望むと…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き ツラギにはそのうち四〇人から五〇人のヨーロッパ人が住んでいて、それでもイギリス人の植民生活につきものの洋風邸宅、クリケットの柱、小さなゴルフコー…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き この美しい島々は、また世界の中心から遠く離れた孤島でもあった。 スペイン人は一五六七年に初めて群島を発見していたが、世界の通商ルートからあまりに…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 二つの列の間には、狭い水道が走り、地図発行者はニュージョージア海峡と名づけたが、旅行者の目には溝あるいは瀬戸という感じなので、いつの間にか”スロ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 一九四二年一月二三日ラバウルが陥落したとき、日本がつづいてその南東わずか二〇〇マイルにあるソロモン群島に進攻してくるであろうということに疑問はな…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 一例としてニューヨーク・タイムズ紙が日本軍のマレー作戦について書いた記事をあげてみよう。 彼らはゴム底の運動靴をはき、ココナツの木によじのぼって…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き イギリス海軍は無敵であるとか、アメリカの技術力の優越とか、日本は単なるものまね上手でしかないとか、西洋の軍人が本質的にもつ優越性、石油、スズ、…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”ステーキと卵”の続き 一二月二三日にはウェーキ島が陥落、クリスマスには香港が落ち、翌年一月三日にはマニラが占領された。 日本軍はさらに蘭印へも侵入し、一二月二三日には…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 「まえがき」の続き その翼は、まるで胴からもぎとられた蝶の羽のように怨めしげに見えた。 もっとも強烈な印象を残した遺跡はガダルカナルの海岸から一五マイルも奥に入った地…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より 「まえがき」の続き 戦後建設されたこの町は人口一万三〇〇〇を数えるが、戦争中はジャングルの一角にすぎなかったのに今は冷房付きのホテルもあるし、スーパーマーケットも開か…