2005-09-01から1ヶ月間の記事一覧
ジムとの約束時間は、とっくに過ぎていた。だが、スタッフは例によってお喋りを楽しんでいて、彼の到着の遅れなど気にする様子はまったくない。副調整室の時計を見ながらイライラしているのは私だけ。いくら時計を見ないようにしても、いつの間にか視線は文…
再び、国営放送局の花形ディレクタ−であるジムの話に戻る。 スタジオでは、ライト・マンによる照明の仕込みが済んで、テレビ・カメラの調整が始まった。当時のオ−ストラリアのテレビ放送は、カラ−ではなかった。(カラ−になったのは、私が帰国して2年ほど過…
ウ゛ィクトリア州には12のフットボ−ル・チ−ムがあり、リ−グ戦のあと、上位の5チ−ムの間で年間試合(アニュアル・コンペティション)が行われ、優勝チ−ムには、銀杯とペナント、賞金が授与される。 ちょっと意外なのは、完全なプロの選手が少ないことだ。…
オ−ストラリアン・ル−ルのフットボ−ルのチ−ムには、それぞれ18人の選手がおり、このうちの2人は補欠だ。ただし、荒っぽいことにかけてはこの上ないスポ−ツなので、当然補欠の出番も多くなる。 競技は、前半25分のあと、20分間の休憩。さらに25分戦…
このように書くと、いかにも「本番を前にして、スタッフ全員に緊張が走っている!」と思われるかもしれないが、そんな雰囲気はさらさらない。例によって、お喋り(ジョ−ク)と笑いが、会話の合間に飛び交っている。 この日ジムが録画を予定していたのは、週…
友人の一人で、国営放送局の花形ディレクタ−のジムから、「テレビの特別番組の収録があるので、よかったら見学に来ないか!」という電話を受けたのは、日ごとに春の気配が増すころだった。 夏のクリケットに対し、冬のスポ−ツと言われるオ−ストラリア独特の…
テレビが終わったあとの出来事を知るには、商業ラジオ局の深夜放送に頼るしかない。テレビが4・5人に一台の割合で普及している国にしては、まことにのんびりしたものである。 その数少ないテレビ・ニュ−スは、土曜、日曜日となると、さらに各局とも一本ず…
メルボルンに限って言えば、国営放送局が一つと商業放送局は三局あるが、午前中にニュ−スを放送しているのは、商業局の一つだけ。それも、午前11前からという“朝寝坊”ぶりだ。 これ以外の放送局の最初のニュ−スは、お昼過ぎか午後1時台になる。 この国で…
この国のテレビ・ニュ−スは、日本とは大分違う。正確には、日本のテレビだけが、フィルムや数字、文字などをたくさん使うのだそうだ(当時、専門家から聞いた話)。 最初は、少々戸惑った。だが、繰り返しキャスタ−の顔を見ていると、私たち視聴者との間に、…
どうもこの国のテレビ・ニュ−スは、「見るもの」ではなく「聞くもの」らしい。 ニュ−ス原稿を読むキャスタ−(アナウンサ−)の顔を、ただ延々と映し出すだけなのだ。画面上で、文字や数字にお目にかかるのは珍しい。ごくたまに、フィルムや写真の入ることもあ…
国営放送局のABCは、ある日「オ−ストラリア人は、イギリス人からしばしば『英語がうまく話せない国民だ』と言われている。だが、オ−ストラリア人自身は決してそうは思っていないから困る」と、オ−ストラリア・ユネスコ教育委員会の調査報告の内容を伝えた。 …
シドニ−大学のデルブリッジ教授とマクウォ−リ−大学のミッチェル教授は、「オ−ストラリア英語の発音」という本の中で、オ−ストラリア英語が非難される理由を次のように分析している。 (1)醜悪な英語である。(2)だらしがない。(3)鼻にかかっている。…
私が“オ−ストラリア語恐怖症”から立ち直ることができたのは、一週間の「牧場巡り・バス旅行」を体験してからである。この旅行で一番驚いたのは、オ−ストラリア人の胃袋の偉大さでも、一日かかっても全体を見渡すことのできないほど広大な牧場の面積でも、ま…
あるアメリカ人が、オ−ストラリアに来て病気になり病院に電話したところ、応対した看護婦から、「あなたは、死ぬために病院にいらっしゃるのですか?」と言われてカンカンになり、「死ぬためではない。生きるために行くのだ!」と怒鳴ったという有名な話があ…
そうは言っても、オ−ストラリアのアルファベットに、AがなくてIが二つある訳ではない。Aの「アイ」と、Iの「アイ」とには微妙な発音上の違いがあって、両者はきちんと区別できるというのだが、そういう使い分けを外国人の私に求めても無理というものだろう。…
日本を出発する前から、オ−ストラリアでは、「Aはエイではなくアイと発音する」と聞いていたので、頭の中では十分理解していたつもりでいた。だが、現実に耳から入ってくる「アイ」という音を、Aなる文字に結び付けるのはとても無理だ。「アイ」から連想でき…
仮に、親友の弁護士がオ−ストラリア語を話す人間だったら、果たしてこうも親しくなれたかどうか疑問に思える。たとえ友人になれたとしても、私がオ−ストラリア語をどうにか理解できるようになってからのことだろう。もしそうだとしたら、彼とのつきあいはあ…
私の高校時代の恩師で、T女子大のS教授は、「オ−ストラリア英語にほんろうされている」という私の便りに、次のように答えてくださった。 「オ−ストラリア英語は、まず“英語ではない”と考えること。そうすれば、新しく学ぶ言語にしては、英語とかなり共通部分…
「ワン、トゥ−、スリ−、フォ−、ファイブ、スィックス、セブン、“アイト”・・・」。 ベッドから離れられずにニ番寝を楽しんでいた私は、ここで飛び起きた。 傍らで数を数えていた息子は、そんな父親を見て驚いた様子だ。 「アイトとは、どうしてなんだ?学校…
声の主を見ると、茶色のス−ツを着た背の高い男性だった。ニコニコ笑いながら私を見ている。どう答えていいか、とっさに判断できずにちゅうちょした。すると、彼は私たちを招待してくれた“馬の歯医者さん”に、「なあ、少しいいだろう。日本のことを知りたいし…
友人の“馬の歯医者さん”は、この日の招待客を一通り紹介した後、私のためにウイスキ−を注文してくれた。彼は、私がウイスキ−好きなのを十分承知しているからだ。「注文してくれた」と言っても、ウエイタ−役は彼の牧場で働く牧童だ。私は恐縮して、ウイスキ−…
メルボルン・カップ・デイは、ご婦人方にとっては「ニュ−・モ−ドの発表会」、あるいは「ファッション・ショ−」をも兼ねているようだ。上流社会のご婦人方が、この日のために作らせたご自慢のトップ・モ−ドのドレスを身に着けて競馬場へやってくるからだ。い…
「遅かったじゃないか。大穴でも当てて、馬券公社がお金をそろえるまで、長い時間待たされたんじゃない?」 牧場主で馬の歯医者をしている赤ら顔の友人(建国記念日に開かれた「バッチャラ−ズ・パ−ティ−」で知り合った)が、金髪をかきあげながら声をかけて…
「強盗にサ−ビスを提供してしまう銀行員」となると、ことは重大で、明らかに“犯罪だ”と思う。 『借金に困ったある銀行員が、冗談のつもりで、知人に「もし、誰か銀行に押し入りたい人間がいたら、仲間に入れてくれるよう頼んでほしい」と言った。すると、そ…
そのサ−ビス精神が、時には苦になることもある。まったく身勝手で、バチが当たりそうな言い分だが・・・。 個人が開くものではなく、大勢の人々が集まる企業などの主催するパ−ティ−でのことだ。不特定多数の人間を相手に、喋り疲れ、あるいは飲み疲れて、ゆ…
オ−ストラリアで現在(注・30年前のこと)流通している50セントコインの中に、表がエリザベス二世、裏にはオ−ストラリア大陸を発見したキャプテン・クックの像を刻んだものがある。これは、「オ−ストラリア発見200年記念」として、イギリスのエリザベ…
時間を意識する彼に気づかなかったのは、私の“鈍さ”のせいかもしれない。午前零時の時報を流すことは、大晦日のパ−ティ−のハイライトだったのだ。 私が彼の立場だったら、一滴のお酒も飲むことなく、腕時計とにらめっこしていたに違いない。 ところで、メル…
プレ−ヤ−からラジオに切り替えた瞬間、「間もなく、ニュ−イヤ−ズ・デイです」のアナウンスに続いて「ポ−ン」という午前零時の時報が・・・。まことにみごとなタイミングだ。「新年おめでとう」のあいさつに続いて、今度はキスの雨が降る。 この夜のラジオは…
ご婦人方が紳士たちの三倍のアルコ−ルを飲めるには、「理由(わけ)」がある。パ−ティ−の帰りに、車を運転する心配がないからだ。人手不足のこの国では、タクシ−はなかなかつかまらないし、料金もかなり高い。だから、ご亭主が運転して帰宅することになる(…
オ−ストラリアでは、クリスマス・イウ゛もクリスマス当日も、どの家庭でも厳粛に過ごす。だが、大晦日はまったく反対だ。ダンス・パ−ティ−やガ−デン・パ−ティ−などを開いて、短い夏の夜を精一杯エンジョイする。 証券会社に勤める友人は、毎年大晦日に近所の…