2009-04-01から1ヶ月間の記事一覧
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” まず、座り心地のよい椅子に座ってスコッチと氷でのどをうるおし、それから熱いシャワーと清潔なシャツ、豪華な夕食を供された。 アメリカ軍が上陸したのちゴー…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” また辛い苦しい登り坂ばかりの旅をして、九月一六日の午後五時頃、クラーク神父、ビル・ウォーデン、それに偵察員と人夫の一団がやっとゴールドリッチのキャンプへ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 一三日の夕方遅くなって、マクファランからの使いが着き、平地に向う途中の四時間ばかり離れたベラナという集落へ向うよう言って来た。 ゴールドリッジの連中もそ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” マクファランによれば、ナラとアメリカの勢力圏の間の地域には日本軍がうようよしている、クラークとウォーデンは一緒に降りられる時が来るまで、ゴールドリッジに…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 「決してそんなことはない」とクラーク神父はうけあって、 「あの新米の兵隊たちはわれわれみんなの敵です。 あなたがたは賞められこそすれ、罰されたりなんかしま…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 翌一一日の夕方、彼らはやっと島の中心部にある、人口二〇〇人ばかりのナラという大きな集落に到着した。 ここには住民の同情さえ得られれば食料も休息もたっぷり…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 「いいんです」とウォーデンは答えた。 「今日はぼくが二四歳になった誕生日なのですから」 すっかり心を和らげた神父は、自分のコンビーフと最後のパンの皮も渡し…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 彼らの計画では野生の植物を採取するつもりだったが、ジャングルには食用になるものはほとんどなく、その日の昼食に神父は最後のコンビーフ罐を開けた。 彼は中味…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” クラーク神父とビル・ウォーデンが先頭に立ち、信頼できるタンガラレの偵察員四人、荷持ちと道案内に七人の少年伝令が従った。 それは難行苦行の連続だった。 ある…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” しかし翌七日の昼頃、噂がふたたび拡がり、神父ももはやこの恐怖にかられた人々をなだめることはできないと悟った。 これを解決するには、誰かが山を越えてアメリ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 「ちがう」と司教は答えた。 「わたしは必要ならば攻撃する許可を与えよう」 クラーク神父にとっては武器を実際行動のために持つ許可を司教から得るのが何より重要…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” しかし誰も信じようとしなかったので、結局彼は自分で偵察してくると申し出て、避難者たちはしぶしぶその結果を待つことに同意した。 神父は出発する前にオーバン…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 戦闘は彼らのいる島の西端近くまで拡大し、丘陵地帯へ行かねばならなくなったのである。 日本軍が背後に迫ったので、彼らはひたすら逃げるしかなかった。 一行は司…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 毎朝神父は彼の担当区域を巡回に出かけ、ウォーデンはのんびりと時を過した。 海辺をぶらつき、現住民の子供とたわむれ、ベランダのデッキチェアにくつろいで本棚…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 一方この小柄でせわしなさそうな伝道者は、公的な地位というものは全くないのだ。 彼と一緒に出て行くのは奇異に感じられたが、クラーク神父は偉大な説得者で、結…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” それはきわめて大胆な行為だったが、彼はそれによって立場を割り切ったのである。 よき羊飼いは、時には群れを見守る以上のことをしなければならない。 囲いに入っ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 嘘とごまかしの夕べだった。 しかしクラーク神父は大して苦にしなかった。 日本軍は去って行き、伝道所は無事で、羊飼いは群れを守ったのだ。 次の試練は八月七日…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 島の南海岸で無線監視所のよい場所はどこかと尋ねられたので、彼はすぐにハンター岬をあげた。 いずれは日本軍がそこを見つけるにちがいない以上、はじめからそれ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” ベランダに帰ると石本はさらに二、三の質問を重ねた。 「まだ島に白人がいるのか」と聞かれたので、 「絶対にいません」と神父は答えた。 「では現住民五〇〇人の…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 彼らは伝道所のベランダに落ちついたが、四人の将校は背のまっすぐな椅子にきちんと腰かけ、クラーク神父とマイクル修道士がデッキチェアにくつろいでいるのが不釣…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 三本目の銃は比較的役に立たない二二口径で、これはわざと隠さないでおいた。 日本軍は彼が銃を全然持っていないといっても信じないだろうと思ったからである。 こ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” そこでクラークは、命令を無視するようにと伝える代わりに、海岸に残って注意していなさい、そうすれば目撃したことを報告することで役に立つかもしれないと指示し…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” ソロモン群島における教会の統括者で老ベルギー人のオーバン司教は伝道者たちに”中立”をすすめ、日本軍に対してその旨を誓言するようにと言っていたが、クラーク神…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 両方とも「白人」で、日本人についてはただ「新白人(ニュー・ホワイト)と呼んだ。 クラーク神父にしても国家意識はあまりなかった。 あえて言えば彼は連合国側で…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 彼が得ていた収入のほとんど全額は住民に還元されていた。 また彼はカトリックの信徒だけをひいきにすることなく、プロテスタントの信徒も異教徒も同じ教育と同じ…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 巡回しながら一日に一五〇人の告解を聴くこともざらだった。 また地区にある一〇ヵ所のミッション・スクールの校長として、彼は地域での唯一の教育機関を統轄した…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” クラークはその時ビサレへ向っているところだったが、手紙はリレーされて届き、彼は帰りに寄ると約束した。 そして彼は約束を守って二一日にジャングルから姿を現…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 身分がはっきりしたのでシュレーダーはウォーデンを洞窟に連れ帰った。 そこで飛行士はやや不機嫌な表情のローズに挨拶された。 たいていの監視員は一人で働くこと…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 彼は空母エンタープライズの戦闘機パイロットでウィリアム・H・ウォーデンだった。 彼はアメリカ軍上陸の日の七日の空戦で撃墜され、一週間付近の海をゴムボートで…
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” すべては八月一五日に始まった。 その日ガダルカナルの西端で働いていた白髪のローズは、現住民からアメリカ人飛行士がチアロ湾の近くにゴムボートで上陸した話を…