2008-08-01から1ヶ月間の記事一覧
「わたしと映画・南十字星」(71) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 彼らが土人に變奘したまま、日本軍の標識の下に攻撃を加えたことは、明らかな違法行為であるから、戦時俘虜たる身分を與えることは出来ない。 ページ大尉や、ダヴィドソン少佐は訊問の…
「わたしと映画・南十字星」(70) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 第二 リオウ群島を變裝のまま通過し、變裝のまま通過し、變裝のままスケッチ等ををして偵察行為をした。 これは正規の偵察行為でなく、スパイ行為である。 スパイが国際法違反であるこ…
「わたしと映画・南十字星」(69) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 今までの取調べは情報のための取調べだつたが、今度は法律の下、彼らの行動を吟味する峻嚴な訊問である。 神谷少佐が取しらべを行い、私は單なる通譯としてこれを助けた。 取調べの結…
「わたしと映画・南十字星」(68) 「オーストラリアの特攻隊」の続き それはマライ俘虜収容所の俘虜は全部シンガポール降伏の時捕えたものだから戦況の推移を知らない。 その中へ最近の日本軍の非況を知つている俘虜を入れたなら在来の俘虜の士氣を鼓舞し…
「わたしと映画・南十字星」(67) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 彼等は非常に喜んでくれた。 こうして私たちは、本當の友達になつていた。 そして、これには参謀部の誰れもが文句を云わなかつた。 軍司令部の意見の對立 ひと通りの取調べが完了した…
「わたしと映画・南十字星」(66) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「よし、明日持つて来よう」と云つた。 「それまで契約の保證にこれを預かつておく」 と云つて、暗黒街の本を取りあげた。 軍隊には加給品という定めがある。 食事の時に、甘納豆や洋…
「わたしと映画・南十字星」(65) 「オーストラリアの特攻隊」の続き ダヴィドソン少佐は、暇があれば讀書をした。 私は英国のユーモリストであるウードハウスの愛讀者で、その本を三十冊ぐらい集めていた。 彼は全部これを讀了し、もつと貸せと言つた。 …
「わたしと映画・南十字星」(64) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「その時家族に別れを告げたのか」 「ノウ、ただ少し遠くへ行くと言つただけだが、妻はSRDの任務を知っているから、萬事を察したと思う」 「子供にも會つたのか」 「子供は2人とも…
「わたしと映画・南十字星」(63) 「オーストラリアの特攻隊」の続き この勝負はもちろん問題にならなく、今中曹長の勝だつた。 しかし、 「初段ぐらいでは、あの強力の柔道には歯が立たないでしようよ」と言つていた。 ケリー中尉はメルボルン出身で、一…
「わたしと映画・南十字星」(62) 「オーストラリアの特攻隊」の続き この軍用辭典のために私は終戦後、生命にかかわるほどの困難に遭遇するのだが、ここには關係がないから書かない。 水上憲兵隊は元のキリスト教青年會の建物で、裏は美しい芝生になつて…
「わたしと映画・南十字星」(61) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 秘密の兵器は直ちに司令部に報告され大本營にも報告された。 彼らの中のポースト軍曹がSBの設計圖を書き、昭南で製作することになつたが、終戦までには實現しなかつた。 心の觸れ合い …
「わたしと映画・南十字星」(60) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 操縦者は潜水服を着、半身をあらわして舟をすすめる。 目標に近づくと、時々頭を上げて方向を見定めては、また水にくぐる。 艦船のそばへ来れば、右手で操舵をにぎり、左手でリムペッ…
「わたしと映画・南十字星」(59) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「SBについてどのくらい知つているのですか(How much you know about S.B.?)」 と逆に質問してきた。 「オウ・エヴリシング(何んでも知つているよ)ダヴィドソン少佐が今向うで…
「わたしと映画・南十字星」(58) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 翌日、調査官の情報持ちよりの時に、彼らの輸送船攻撃の計畫のうち、二人ずつゴムボートに乗つて近づく際の、二人ずつの組み合せがまるつきり違つていることが解った。 水元大尉は職掌…
「わたしと映画・南十字星」(57) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 極秘の秘密兵器 私は以上の調査の概要を高級参謀の桑原中佐に報告した。 俊敏な桑原参謀は黙つて私の報告を聞いていたが、 「爆薬を捨てるなら海へ落せばいい、逃走に一番便利な帆船を…
「わたしと映画・南十字星」(56) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「隣りの島までどうして達したか」 「我々は皆水泳の訓練をうけている。 その外に危急の時はズボンの兩スソをしぼり、兩足の中に椰子の實をつめこんで浮き袋に使用することを習つてい…
「わたしと映画・南十字星」(55) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「日本軍の攻撃のし方をどう考えたか」 「實戦に徑験のない兵隊だと感じた。 此方にとつて守るのに一番楽な地點から進もうとしていた。 あの陣地には一カ所だけ弱いところがあり、そこ…
「わたしと映画・南十字星」(54) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「それは何故か」 「この島を攻撃する積りなら、あんな不利なところへ艇をつけるはずはないと思った。 あれでは我々の陣地から攻撃するのに一番良い目標となるからだ」 「それでは何故…
「わたしと映画・南十字星」(53) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 彼らの企圖が挫折したのは金曜日の夕方だつた。 この報告が司令部にとどいたのは、私が冒頭に書いたように月曜日の晝食の時だつた。 言いかえれば、彼らが日本軍の警戒を過信せず、そ…
「わたしと映画・南十字星」(52) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 船内の金貨は各人平等に分配して肌身につける。 三時間以内に出来るだけ港口から遠ざかる。 ようやく吹き出した風を利用して、彼らは港外をはなれ、帆船を爆破した。 巡警の聞いた爆發…
「わたしと映画・南十字星」(51) 「オーストラリアの特攻隊」の続き ただちに帆船上で緊急會議を開いた。 彼らは報告によつて日本軍の出撃してくるのを三時間後と推定した。 三時間のうちに逃走しなければならない。 輸送船爆破は無論断念した。 そして…
「わたしと映画・南十字星」(50) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 「よし臨檢して少し威張ってやれ」 近づいてくる哨戒艇を見て帆船では、最後の時が来たことを感じた。 「そばへ来たらお仕舞いだ」 ページ大尉が自ら消音機關銃をとって、裸のまま、…
「わたしと映画・南十字星」(49) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 港から一番眺望のきくところで船をとめて風待ちをすることは危険至極だった。 一行中には緊張のあまりヒステリックになる者さえあった。 萬一の頼みは、船上の日章旗と軍政監部…
「わたしと映画・南十字星」(48) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 一行は港の入り口に夕方到着し、夜を待つて各自ゴムボートに二人ずつ分乗して目的物に近づき、爆破装置をすることになつていた。 夜を待つ場所もすでに決めてあり、それはまつたく日本…
「わたしと映画・南十字星」(47) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 一度、海軍哨戒機が頭上に低く舞いおりてきたことがあって一同ハッとした。 ページ大尉が裸身のまま船首の日章旗を握って左右に振ったところ、機は翼を左右に振ってこれに答え、飛び…
「わたしと映画・南十字星」(46) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 用意してあった英陸戦隊が使用するコマンドーという溶液を全身にぬって皮膚の色を變えた。 パンツを脱いで土人のふんどしと代え、帆船には日章旗と、軍政監部旗をたてることにした…
「わたしと映画・南十字星」(45) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 帆船の基地設定がおわると、潜水艦は正確に一カ月目、即ち十月十二日の夜十二時に、マポール島へ迎えに来ることを約して帆船と別れた。 日本軍がマポール島を攻撃したのは十月十日であ…
「わたしと映画・南十字星」(44) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 濠洲西海岸唯一の港であるフリーマントルから出航することになり、八月十二日同港から潜水艦に搭乗した。 約十日間は快適な水上航海だったが、それからジャバの東方ロンボク海峡を通過…
「わたしと映画・南十字星」(43) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 訓練課目は偵察のしかた、體力の養成、敵軍の識別、日本語などで、柔道も習つたという。 訓練方法は昔の伊賀者の修業を思わせる嚴しいものだつたらしい。 約半歳の訓練を經て、隊員は…
「わたしと映画・南十字星」(42) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 戦争まで濠洲は四個師團を持っていた。 そのうちの一つ、第八師團はマライに派遣されていたので、開戦とともに全員日本軍の捕虜となり、國内は三個師團に減った。 しかし青年たちは争…