2009-05-01から1ヶ月間の記事一覧

 ●「続・知られざる日豪関係」(794)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 翌七日の午後、グランパスは錨をあげ、ブリスベーン港からすべり出ると、北東の海上へ姿を消した。 艦長のJ・R・クレイグ中佐は親切な軍人で、出航後の六日間で…

 ●「続・知られざる日豪関係」(793)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” アメリカの潜水艦にオーストラリア人が乗りこむことで起こるかも知れない緊張を避けるため、監視員たちはアメリカ水兵の制服をつけていた。 ウォデルがすばらし…

 ●「続・知られざる日豪関係」(792)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” しかし二人の助手はいずれも手ごわい男たちであった。 大男で神話的風貌の持主シートンは、ふだんは温和そのものだったが、一度怒るとすさまじい圧倒的な激情を…

 ●「続・知られざる日豪関係」(791)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” また何もかも手で運ぶことになるので、無線機を除いてどの荷物も五〇ポンドより重くてはならなかった。 そして何よりも、潜水艦の三〇×三〇インチのハッチを通れ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(790)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” だが、この時はどういうわけか話がすらすら運んだ。 ゴムリーの参謀長が潜水艦作戦を担当する南西太平洋潜水艦司令部に要望を伝えるとすぐに承諾の返事が来た。 …

 ●「続・知られざる日豪関係」(789)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 「ノー、サー」少将はあっさりと断ったが、少将という高級士官から”サー”をつけて呼ばれたのは初めてだであったから、この会話はブルックスバンクにとって記憶す…

 ●「続・知られざる日豪関係」(788)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” チョイセル島行きをえらぶのはもっと簡単だった。 別の若い地区行政官ニック・ウォデルは一九四一年はじめてこの島に正式の政庁支所を設立した人物で、他の誰よ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(787)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 彼はすぐにマッケンジーの沿岸監視網拡大計画を引き受け、それは二、三日後、群島行政長官マーチャントとヴァンデグリフト将軍の情報将校エドマンド・J・バック…

 ●「続・知られざる日豪関係」(786)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 気のきかない汗にまみれた海兵隊員には、この男は別世界から来た人 ── 静かな夏のホテルの客人かとも見えたが、彼がマッケンジー中佐の司令部へ向うのを見てもう…

 ●「続・知られざる日豪関係」(785)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” もしカクタス空軍(ガダルカナル所在の米海兵隊航空隊の略号名)が敵に痛打を与えようとするなら、迅速で正確な情報が不可欠だった。 マッケンジーは、彼の監視…

 ●「続・知られざる日豪関係」(784)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” たとえば八月二五日、二六日にブーゲンビル島の二人はともに敵機を見落し、次の地点であるニュージョージア島の監視員ドナルド・ケネディに発見されたが、余裕は…

 ●「続・知られざる日豪関係」(783)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” またこの新見張所は海岸から一〇マイル離れているため、天候が悪いときは沖合の日本艦船を見分けるのがむずかしくなった。 その後メイスンが送った簡潔な報告に…

 ●「続・知られざる日豪関係」(782)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” つづいて別の現住民が現われ、日本軍の偵察隊が監視員たちを探すために活動を始めていると伝えてきた。 その男は噂でないことを示すために、上陸部隊の兵士がく…

 ●「続・知られざる日豪関係」(781)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” 日本軍はさらにブーゲンビル島の南端に近い平地に戦闘機用滑走路を作れば、さらに二〇八マイルを節約できると判断したらしく、九月九日、数隻の輸送船がカヒリ村…

 ●「続・知られざる日豪関係」(780)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” ブカ水道に完成間近い飛行場を占領してあるのだ。 ここを根拠地とすればヘンダーソン飛行場まで往復三〇〇マイル以上の節約になった。 八月の終りに日本軍は設営…

 ●「続・知られざる日豪関係」(779)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” これを説明しようとすれば、がダルカナル上空で貴重な飛行機とパイロットを大量に失っている戦況を、なんとか回復しようとした日本の決意に触れねばならない。 …

 ●「続・知られざる日豪関係」(778)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”新しい目と耳” ラマダ号が伝道者救出にタンガラレへ向っている頃、そこから一二〇〇マイル離れたオーストラリアのブリスベーンでは、きわめて野心的な遠征計画が進行しつつあっ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(777)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 興奮した人々が押しよせ走りよってくる様子を一目見て、日本軍が周辺にはいないことが分った。 ラマダ号はゆっくりと浜辺に近より、錨をおろした。 そしてホートン…

 ●「続・知られざる日豪関係」(776)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 次は修道女たちだが、それは涙の別れになった。 何しろレオネ修道女は一九〇五年以来タンガラレで働いていたのだ。 最後にブルグマンス神父にさよならを言い、午後…

 ●「続・知られざる日豪関係」(775)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” クラーク神父はこんなやりとりをつづけているひまはなかった。 そこで彼は説明した。 本当は行くつもりはない、決して。 しかしそれは秘密にしておかなくてはなら…

 ●「続・知られざる日豪関係」(774)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” さようならを言いに来たのかと思ったが、そうではなかった。 彼らの代表格で伝道所の主任伝道士のテオチモ・サウツがぶっきらぼうにたずねた。 「あなたもいらっし…

 ●「続・知られざる日豪関係」(773)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 予告が入った。 タンガラレでは非常呼集がかけられた。 一同はもう一回荷造りをやり直した ── クラーク神父を除いて。 彼はこの時重大な決意をひそかに固めていた…

 ●「続・知られざる日豪関係」(772)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 彼は理論倒れの幕僚タイプではなく、実行肌の男だったから、さっさと見切りをつけると自前で救出作戦を計画した。 すぐにマライタ島へ無電で群島行政長官の自家用…

 ●「続・知られざる日豪関係」(771)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” そのころルンガでは、ヒュー・マッケンジーがすっかり腹を立てていた。 司令部がPBYを送る計画を二度もキャンセルしてしまったからだ。 飛行機はほかのもっと緊急…

 ●「続・知られざる日豪関係」(770)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 夕方近くなって伝道所のいちばん大型のカヌーが飛行艇の着水地点までの輸送を開始した。 ところが急に情勢が変わってルンガからの無線が追って通報するまで移動は…

 ●「続・知られざる日豪関係」(769)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” それからローズの無線機を使って、しばらく前から考えていた提案を連絡してみた。 一同が去ったあとも一人だけタンガラレに残って情報連絡をしたいというのだった…

 ●「続・知られざる日豪関係」(768)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” マクファランは彼にC携帯糧食、コーヒー、乾燥肉とラッキー・ストライクを四箱持たせた。 またケン・ヘイは気前よくドライ・ベルモット二びんを差し出した。 九月…

 ●「続・知られざる日豪関係」(767)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” 一方、ゴールドリッジで波長をあわせながら、クラーク神父は最新の情勢を整理して、検討を加えていた。 四人の伝道者はまだタンガラレに残り、他はあちこちに散…

 ●「続・知られざる日豪関係」(766)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” PBY飛行艇を二機タンガラレに送って、二八日に伝道者と監視員の全員を拾うというのだった。 ローズとシュレーダーは無線機を荷造りして洞窟を出ると、ヒラボ川を下…

 ●「続・知られざる日豪関係」(765)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より ”よき羊飼い” だが、その日が過ぎると、もっと悪い報せが来た。 ローズからの無線によると、日本軍が南岸に移動しつつあり、司教と伝道者たちはタンガラレを放棄している。 ロ…