2006-03-01から1ヶ月間の記事一覧

  夜行列車のハプニング(5)

彼女の英語は、なまりのきつい典型的なオ−ストラリア語だ。その上、酔いが回っているせいか、いっそう聞き取りにくくなっている。 彼女の勧めを断って、私はシラフを通していた。だから、分かりにくい英語にも忍耐づよく耳を傾けることができたのだろう。 そ…

  夜行列車のハプニング(4)

彼女は、すでに5本の缶ビ−ルを空にしていた。手提げ袋の中は空き缶だけで、もうビ−ルは残っていないようだ。 最後のひと缶? を開けて、二口三口飲んだところで、睡魔? か、酔魔? に襲われて、コックリコックリし始めた。 彼女は、息子の自慢話をしながら…

  夜行列車のハプニング(3)

椅子は、日本の列車よりも大きくゆったりしているが、寝台車と違って落ち着けない上、冷房がきつくてなかなか寝つけない。 眠れない理由は、実はもう一つあった。隣の席にいる中年の女性が気になって仕方がないのだ。と言っても、50歳を過ぎた「おばさん」…

  夜行列車のハプニング(2)

「なぜ、あんな重いものが空を飛ぶのか? 」という議論は別にして、私は、飛行機が水平飛行に移るまでと、特に着陸するときが“ダメ”だ。 飛行機の脚が地面に着くまで、ただひたすら椅子のひじかけにしがみつき、両足を精いっぱい床に伸ばして踏んばるだけ・…

  夜行列車のハプニング(1)

南オ−ストラリア州の首都アデレ−ドは、まるで雲のない街のようだ。 2年ごとに開かれる「アデレ−ド芸術祭」には、世界中から各分野で一流の芸術家たちがやってくる。 その芸術祭を見学するため1週間ほど滞在したのだが、この間一度も雲を見ることはなかった…

  胃袋の違い?(13)

「ウイスキ−もブランデ−も、食欲を増進させるために飲むワインの延長にすぎない」ということなのか? ところで、 「ほんのちょっとたしなむ程度」だった彼の言葉とは裏腹に、私たちは、ウイスキ−のグラスを次々と重ねていた。 ゼミに出席するため席を立った…

  胃袋の違い?(12)

「何を言うかと思えば、そんなことを心配してくれていたのか? ほら、あそこにいるちょっと年を取った感じのあの人! 彼は教授なんだけど、あと30分ぐらいでゼミが始まるはずなんだ・・・」(これが、彼一流の“ジョ−ク”であることを願う!) 「本当に? 彼…

  胃袋の違い?(11)

コップの中には、コハク色の飲み物が入っていた。氷も浮かんでいる。 「これ、ウイスキ−じゃないの?」 「うん、そうだよ。“冷たくて軽い飲み物”に違いないだろう? 実は、このウイスキ−、ちょといけるんだ!」 彼は、この国では珍しいウイスキ−党だ。 こと…

  胃袋の違い?(10)

立ち飲みのパブと違って、趣味のいい造りのカウンタ−の前には、椅子とテ−ブルがあった。私たちは、庭に面した席を選んだ。 カウンタ−の反対側は、全面がガラス張りになっているので、照明を抑えたレストランから出てきたばかりの私の目には、まぶし過ぎる。 …

  胃袋の違い?(9)

この日の講義が済んだのか、あるいは私のために休みを返上して大学に来てくれたのか、「ワインを飲みながらの昼食」となった。そして、それは1時間余りに及んだ。 この間、私たちは2本のワインを空にしていた。“昼酒に慣れていない”私は、相当に“出来上が…

  胃袋の違い?(8)

彼に従って、教職員専用のレストランに入る。 ふかふかの厚いじゅうたんの感触に、一瞬足が止まる。鋪装された遊歩道を散歩した直後だけに、異様? にさえ感じられた。 レストランはとてもシックな造りで、落ち着いた色調のテ−ブルがずらっと並んでいる。 ま…

  胃袋の違い?(7)

すれ違う学生たちは、仲間と明るい声でにぎやかにおしゃべりしながら構内をぶらついている。芝生に寝転んで本を読んでいる学生もおり、大学のキャンパスとはとても思えない雰囲気だ。政治的な“タテカン”などは、一切見当たらない。 大学の建物には、歴史をし…

  胃袋の違い?(6)

それらの中には、彼の専門であるマ−ケティングに関する書物だけでなく、釣りや園芸などいわゆる趣味の本も何冊か含まれている。 彼が取り組んでいる研究について、ひとしきり話を聞いたあと、 「少し、構内をぶらついてみない? まだ、おなかの方は大丈夫だ…

  胃袋の違い?(5)

受け付けのお嬢さんに案内されて彼の研究室へ行くと、“書物の中”から彼が現れた。 黒いガウンを着ている。思わず目をみはるようにして、頭のてっぺんから足のつま先まで眺める。 ラフなスタイルが売り物の普段の彼からは、とても想像できない“いでたち”だ。 …

  胃袋の違い?(4)

親友の奥さんの弟(義弟)は、メルボルンの大学でマ−ケティングを教えている。 ある日、その義弟から、「勤め先の大学で、一緒に食事をしよう」と招かれた。彼とは、親友の弁護士(義兄)の家で何度も顔を合わせている。私と同年齢だが、彼の方は、“海に面し…

  胃袋の違い?(3)

救急車は、私が歩いているところから30メ−トルほど先にあるパブの前に止まった。白衣を着た係官が担架などを抱えて、車の後部から飛び出すのが見える。 急いでパブの中に入ってみると、カウンタ−の前の床に、ビヤ樽のような大きなお腹をした男が長々と伸び…

  胃袋の違い?(2)

そんな事情があるからだろう。昼休みの時間には、片方の手にミ−ト・パイやサンドイッチを、もう一方の手にはソフト・ドリンクスを持って、“ぱくつき”ながら、あるいは“飲み”ながら、デパ−トや洋装店のショ−・ウインド−をのぞき込む若い女性の姿がどこでも見…

  胃袋の違い?(1)

前にも書いたように、オ−ストラリアを語るとき、“アルコ−ル抜き”で話をすることはできない。 アルコ−ルは、毎日の暮らしの中にかなりの濃度で溶け込んでいるからだ。 昼休みに、メルボルンの目抜き通りをぶらついていた。 この時間は、若い女性にとっては特…

 「死者と生者」さらに続き

この経験を通じて、オ−ストラリアという国が、「ヨ−ロッパの延長線上にあること」を改めて実感した。 帰国後も、同じような出来事があった。 1974年4月22日の夜、パン・アメリカン航空のボ−イング707型機が、バリ島のデンパサ−ル空港近くの山中に…

 「死者と生者」の続きの続き

親友は、たったひと言答えた。 「こんなとき、私たちオ−ストラリア人は、ただ「バッド・ラック(運が悪かった?)」と言うだけなんだ・・・」。 人が死ぬと、その魂は肉体を離れて神のみもとに召されてしまう。 だから、魂が抜けてしまった遺体を、わざわざ…

 「死者と生者」の続き

私は、その後の情報を知ろうと、日本航空のメルボルン支店に行ったのだが、ここで、“意外な話”を聞かされた。 17人の犠牲者の遺族のうち、「遭難現場へ行きたい」と希望したのは、たった一家族だけ。それも、「遺体確認のために必要なら・・・」という“条…

  死者と生者

これは、私が受けたカルチャ−・ショックの中で、最も“辛い思い出”の一つだ。 1972年6月14日、インド・ニュ−デリ−のパラム国際空港の近くで、日本航空のDC8型機が墜落し、乗客と乗員合わせて89人のうち、86人が死亡するという痛ましい事故が起き…

  余った料理は「お持ち帰り」のさらに続き

押しボタン式の大型スイッチを、“押す”というよりは、“押し込む”と言った方が適切だろう。 とにかく、グイ−ッと押すと、階段の明かりがつく。 しばらくすると、このスイッチは少しずつ浮き上がってくる。つまり、元に戻ろうとするのだ。 その速度は非常に遅…

  余った料理は「お持ち帰り」の続きの続き

何のことかすぐには理解できなかったので、繰り返し聞いてみると、「容器代として10セント(40円)支払えば、食べ残した料理をそれに入れて持ち帰ることができる」というのだ。彼の忠告? に従ったのは、言うまでもない。 家に帰って味を付け直したら、…

  余った料理は「お持ち帰り」の続き

あらかじめ「どういう料理か」を尋ねてから注文するのだが、実際に食べてみると、予想と違うことがある。一口に“辛い”と言っても、「ピンからキリ」まである。これは、よくある話で、仕方のないことでもあろう。 ある日、そんな料理の“裏切り”に遭遇し、ちょ…

  余った料理は「お持ち帰り」

この国の人々の合理的な生活ぶりを、引き続き紹介したい。 オ−ストラリア料理専門のレストランがあるのかどうかは分からないが、私たちがよく利用したのは「チャイニ−ズ・レストラン」である。 オ−ストラリアの中華料理でも、私たち日本人の口によく合う。だ…

 「オ−ストラリア人気質の詳細」(12)

どういう訳か、本家ではとっくに見かけなくなった旧型の日本製の車が、メルボルンの街を元気に? 走り回っている。 湿度が低いため車のボディが腐らないせいか、あるいは「車は走ればいい」と割り切って外観にこだわらない国民性の違いからか、とにかく信じ…

 「オ−ストラリア人気質の詳細」(11)

この掃除機はオランダのP社製だが、外国では、不要とも思えるほどモデル・チェンジを繰り返すことはないようだ。だから、古くなった製品の部品でも、簡単に入手できる。 私が持て余したのは、これも前任者から譲り受けた冷蔵庫だった。 実は、これには「自動…

 「オ−ストラリア人気質の詳細」(10)

オ−ストラリアの人々は、たとえば、栓をひねるといつでもお湯の出るような“便利な生活”を楽しんでいる。だが、意外なことに、電気洗濯機や掃除機のない家庭が多い。 この国では、電化製品は非常に高く、日本の2〜3倍もするからだ。これらは、比較的安く買…

 「オ−ストラリア人気質の詳細」(9)

この喫茶店で使われているのは、紙製のスティック状の砂糖ではなかった。 若い二人連れは、透明で四角い砂糖袋に、中身を少し残したまま捨てたようだ。 オ−ストラリアの親友は、小さな声で「オウ・ノウ」と言ったようにも聞こえた。 「何を熱心に見ているん…