2005-10-01から1ヶ月間の記事一覧

  トラム(路面電車)に乗る(4)

「私のために座席を用意するつもりですか? そんな心配は必要ありません。あと15分もすれば、この電車はガラ空きになるのですから・・・」 乗客のこの温かい言葉に感謝しながら、「あと15分もすれば」とは、何とも気の長い話ではないか?。電車は、すで…

  トラム(路面電車)に乗る(3)

「なんと不届きな!仕事をそっちのけにして、競馬にうつつをぬかすなんて! しかも、勤務中に飲み物まで飲んでいる。迷惑するのは乗客なんだぞ!」(トラムは「市電」だから、車掌さんは「地方公務員」?) 半ばいらだちながら、ふと周囲の乗客を見ると、座…

  トラム(路面電車)に乗る(2)

電車の切符は、ピ−ク・アワ−には中心街の大きな停留所でも発売するが、普通は車内で車掌さんから買い求める仕組みになっている。 この国での生活に慣れていないせっかちな日本人としては、「早く切符を買って、隣の席に置いてある荷物を自分の膝の上に移そう…

  トラム(路面電車)に乗る(1)

メルボルンに赴任して2週間ほどホテルで過ごしたあと、郊外のフラットに移った。 当面生活に必要な物をそろえようと、市の中心街に出てデパ−トなどで買い求め、バ−ク・ストリ−ト駅で帰りのトラムに乗った。この付近は、メルボルンで優雅な建物の最も多いと…

  のんびり消防車(6)

しばらくして、ビル火災の現場に遭遇することがあった。 幸い、大きく燃え広がることなく鎮火したが、このときの消火活動も、日本人の私から見ると“歯がゆいばかり”だった。緊張感が感じられなかったから?だ。 帰国後、日本の消防関係者にオ−ストラリアで体…

  のんびり消防車(5)

私は、一人ぼやいた。「そりゃあそうだろう。かれこれ30分以上経っているのに、ホ−スも出ていない。それにしても、ポンプ車の隊員に現場の様子を伝える無線機も持っていないのだろうか・・・」 仕方なしに、今度は駅の入り口で掃除をしている人に尋ねてみ…

  のんびり消防車(4)

時間が経つにつれ、やじ馬の数も大分少なくなった。それどころか、長い時間混雑の続く東京などと違って“つかの間のピ−ク・アワ−”が過ぎたせいか、駅を利用する乗客そのものもすっかり減ってしまった。 思い切って(しびれを切らして?)ポンプ車のところへ行…

  のんびり消防車(3)

隊員たちは、相変わらずお喋りしながら、のんびりとコ−トのボタンをかけている。 とても、「火事の現場に駆けつけた」とは思えない?。 やがて、手に取った太いベルト(これには、おのとボルト回し、それに長いロ−プがぶら下がっている)を腰に巻きつけ、白…

  のんびり消防車(2)

突然、けたたましい消防自動車のサイレンが聞こえてきた。どんどん近づいてくる。 赤いランプを点滅させ、耳をつんざくような音を響かせながらかなりのスピ−ドで突進してきた消防車は、なんと私の目の前のフリンダ−ス・ストリ−ト駅のすぐそばに止まった。 周…

  のんびり消防車(1)

ある晩秋の一日、あまりにもきれいな夕焼け空に誘われて、メルボルンの中心街(シティ)に出てみた。人口254万余り、オ−ストラリア第2の都市メルボルンは、この国の経済の中心地で、大企業が多い。オ−ストラリアは、世界で最も人口の希薄な大陸の一つだ…

  テレビの影響(6)

私が興味を示すには、「理由」がある。デパ−トなど人の集まるところで、「カラ−・テレビ」ならぬ「カラ−・ビデオ」の公開があると、黒山のような人だかりがするからだ。「日本では、カラ−・テレビが普及しているんですって?」という質問は、耳にたこができ…

  テレビの影響(5)

「もちろん、テレビを見ることに利点がない訳ではない。子どもたちの外国の風土や国民性、科学技術の進歩、動植物についての知識は、以前よりずっと豊かになっている。事実、本よりもテレビから学ぶことの方が多い。だが、その分読書時間は短くなり、読む本…

  テレビの影響(4)

「家族全員がテレビの前に座り、料理の入った皿やボ−ルをひざの上に置いて、黙ったままで食事を取る家庭も多くなった。こうなると、テ−ブル・マナ−だけでなく、料理そのものも変わってきている。つまり、ナイフやフォ−クを使わないで簡単に食べられる料理が…

  テレビの影響(3)

一方、コ−エンさんらの調査の対象外だった国営放送局の方はどうかと言うと、平日の午前中は、幼児向けの番組を2本放送するだけで、あとはテスト・パタ−ンを延々と流す。午後も、短いテレビ・ニュ−スを放送したあと、夕方まで電波は止まってしまうのだ。 国…

  テレビの影響(2)

「商業放送局では、午後3時から6時まで再放送番組をずっと放送する傾向がある。たとえば、チャンネル7(セブン)では、『それ行けスマ−ト』などの番組を再放送している。 ここで問題なのは、これまで何度も再放送されている番組に、新しいタイトルを付け…

  テレビの影響(1)

1971年4月、メルボルン大学のS・K・コ−エンさんら8人は、テレビの再放送番組について調査した結果を新聞の投書欄に寄せた。 「私たちは、メルボルンのテレビ局のいわゆる再放送番組について4カ月間にわたり集中的に調査した。その結果、次のようなこ…

  テレビの周辺(9)

アメンダは、父親の担当するスポ−ツ番組を見ながら、寂しそうにつぶやいた。 「パパのお仕事、早く終わらないかなあ・・・」。 試合が長引いたため父親の帰りは遅れ、アメンダはイライラしていた? すると、中継放送が終わる直前だった。カメラに向かって父…

  テレビの周辺(8)

息子のガ−ル・フレンドの一人、アメンダの父親は、メルボルンにある商業テレビ局のスポ−ツ・アナウンサ−だ。 土・日が休みのこの国にあって、スポ−ツ・アナウンサ−にとっては、逆に書き入れ時である。ところが、運の悪いことに、その土曜日と小学校一年生の…

  テレビの周辺(7)

何を血迷ったのか、スイッチャ−が、突然「天気図」から、体を折り曲げてメモを拾い上げている彼女の画面に変えてしまったのだ。 スタジオのモニタ−に映る自分の姿に気づいた彼女は、「オウ、ノウ!」と叫ぶなり、絶句した。あとはしどろもどろの解説となり、…

  テレビの周辺(6)

「ああ−、やっと終わったわ!」 日本語にすると、こんな意味になるだろうか。美人アナウンサ−は、マイクが“イキている”のも知らずに、大きなため息をつきながら、こうつぶやいた。 旅行先で翌日の天気が知りたくて、地元の商業放送局の天気予報にチャンネル…

  テレビの周辺(5)

実は、ニュ−スの終了後が大変だったようだ。 新聞によると、ボブに対しては「同情」の、そして、ピ−タ−には「祝福」の電話がかかり始め、長い時間ベルは鳴りやまなかったという。 ところで、残念ながらこの新聞は「肝心のこと」を伝えていなかった。 ボブの…

  テレビの周辺(4)

このとき、舞台裏でどんなことが起きていたかについても、新聞は触れている。 「代役を務めたピ−タ−は、たまたま局の食堂でミ−ト・パイを食べていた。 そこへスタッフが飛び込んで来て、いきなり彼をスタジオにひっぱり出そうとした。 彼は、襟に毛皮のつい…

  テレビの周辺(3)

記事は続く。 「夜7時のニュ−スが始まって10分ほど経過して、ちょうど南アフリカの人種差別政策に反対するデモのニュ−スを伝えている最中に、彼は突然口が利けなくなってしまった。 『それは驚いたのなんの・・・。これまで私の身に起こった出来事の中で…

  テレビの周辺(2)

しばらくして「こちらはABCテレビです」の文字は消え、画面には別のアナウンサ−が登場した。 「それでは、代わって私がお伝えします・・・」 ニュ−スは、順調に進んだ。そして、終了間際にシャックリ・アナ氏が再び現れ、交代アナ氏にお礼を言ったあと、カメ…

  テレビの周辺(1)

「放送中に、シャックリが出たら・・・」。テレビの生放送に出演する人々にとって、考えるだけでもゾ−ッとする話だろう。 ところが、国営放送局でテレビ・ニュ−スを読んでいたベテラン・アナウンサ−(正式にはニュ−ズ・リ−ダ−)が何の予告もなしに?シャック…

  テレビ・ワ−ク(12)

こんなこともあった。テレビ・スタジオを見学しているとき、ビルの窓からテレビの中継車が見えた。 そこで、「中継車の内部を見たい」と頼むと、すぐさま案内してくれたが、私が中継車の本体に接続されていた小型の電源車の性能について尋ねると、今度は車両…

  テレビ・ワ−ク(11)

そのジムに紹介されて、地方都市にある国営放送局の支局を訪れたことがある。その放送局のスタジオを案内してもらったときに、おもしろい経験をした。テレビ・スタジオを案内してくれる人とラジオ・スタジオの案内者が、別人であったことだ。 そればかりでは…

  テレビ・ワ−ク(10)

花形ディレクタ−であるジムのこの言葉は、意外に思えた。 私は、「ディレクタ−は、番組に関するすべての責任と権力を持っている」と思い込んでいたからだ。「気に入らない画面があれば、当然のごとく注文をつけるもの、いや出来るもの」と誤解していた。 言…

  テレビ・ワ−ク(9)

「どうしてって?本当に、いつもこんなに静かにしているの?」 「いやだなあ!あなたの言う“静か”の意味がよく分からないんだよ・・・」 「じゃあ聞くけど、ジム、あなたは3台のカメラの切り替えは指示したが、それぞれのカメラ・マンが撮っている画につい…

  テレビ・ワ−ク(8)

やがて、ジムの「VTRスタ−ト!」の声とともに、本番が始まった。リハ−サルの手順通りにテ−マ音楽が鳴り、司会者の挨拶が続いた。そして、出演者たちがワイワイ話しているうちに?番組は進行し、録画は無事に終わった。 この瞬間を待ちかねて、私はジムに尋ね…