2008-07-01から1ヶ月間の記事一覧

 ●「続・知られざる日豪関係」(490)

「わたしと映画・南十字星」(40) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 私の軍隊生活の間に、こんなに丁寧な言葉で敵の俘虜に挨拶したのを見たことはない。 翌日、風呂に入り、新しい日本の兵服に着かえてさっぱりした彼らを四組にわけて取調べをはじめた。…

 ●「続・知られざる日豪関係」(489)

「わたしと映画・南十字星」(39) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 水元大尉がすぐにこれに賛成した。 「それが良い、まずあの連中、臭くてたまらないから、風呂に入れようじゃないか」 「剃刀を與えて鬚をそらせてやろうよ」 「いや、剃刀は危ない、兵…

 ●「続・知られざる日豪関係」(488)

「わたしと映画・南十字星」(38) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 私は、 「水元隊長のいわれる通り拷問では絶對に効果はあげられないと思う。 いま捕えられた連中は、犯罪者として處罰されるか、あるいは戦時俘虜の待遇をうけて俘虜収容所へ入れら…

 ●「続・知られざる日豪関係」(487)

「わたしと映画・南十字星」(37) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 到着した敵兵十一名は、いずれも三カ月の逃走生活に疲れ果て、長くのびた鬚だらけの顔に、眼だけが緊張にかがやいていた。 水上憲兵隊長水元大尉、昭南防衛司令部から新たに取調官に任…

 ●「続・知られざる日豪関係」(486)

「わたしと映画・南十字星」(36) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 遂に逮捕 腰田少佐の討伐隊が、マポール島附近の島を隈なく捜索し、射殺五名逮捕十一名の成績をあげてシンガポールへ還って来たのは、昭和十九年もまさに暮れようとする十二月二十四日…

 ●「続・知られざる日豪関係」(485)

「わたしと映画・南十字星」(35) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 潜入者の一行が諜者であることは解ったが、その外にも重大な目的があるらしいことが解ってきた。 桑原高級参謀は甲會報(軍司令官、幕僚、各部部長の會議)の席上でこういう發表をした…

 ●「続・知られざる日豪関係」(484)

「わたしと映画・南十字星」(34) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 食糧は、すでに私たちが情報によって知っていた「太平洋携帶食糧」であることはすぐに解った。 無電機、拳銃などは、専門家がすぐに研究をはじめた。 私はノートの類いを飜譯した。 「…

 ●「続・知られざる日豪関係」(483)

「わたしと映画・南十字星」(33) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 草の根を分けても 参謀部二課の通譯班に属する私が、昭南防衛隊に、業務援助のため派遣されることになった。 任務はおびただしい遺留品についている英語の飜譯である。 討伐は改めて大…

 ●「続・知られざる日豪関係」(482)

「わたしと映画・南十字星」(32) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 敵が島から脱出してはならない。 山口少尉は船を徹宵、マポール島の周邊にめぐらせて警戒した。 しかし翌朝、全員が前面の高地に突撃し、これを占領した時には敵兵の影はなく、ただ宿…

 ●「続・知られざる日豪関係」(481)

「わたしと映画・南十字星」(31) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 代って指揮をとった第一小隊長山口少尉が號令をかけ、銃聲を聞いて船から駈けつけた他の小隊とともに輕機と歩兵銃を前面の木立の中にうちこんだ。 敵は消音銃を用いている。 椰子の葉…

 ●「続・知られざる日豪関係」(480)

「わたしと映画・南十字星」(30) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 討伐隊長の戦死 マポール島は、シンガポール南方洋上に無数に散らばっている島の一つである。 富田大尉の討伐隊がこの島に上陸したのは、熱帯の太陽がすでに沈みかけている頃だった。 …

 ●「続・知られざる日豪関係」(479)

「わたしと映画・南十字星」(29) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 残置諜者とは英軍が降伏の時に残しておいたゲリラ部隊のことである。 しかしそれにしては方法が大膽すぎるし、あまりに拙劣な姿のあらわし方と言わねばならない。 司令部内では、とり…

 ●「続・知られざる日豪関係」(478)

「わたしと映画・南十字星」(28) 「オーストラリアの特攻隊」の続き これらの情報をあつめた昭南防衛司令部は、こと重大と見て軍司令部に報告してきたわけである。 當時、寺内元帥の南方總軍司令部はすでにマニラに移駐して、土肥原大将の第七方面軍が…

 ●「続・知られざる日豪関係」(477)

「わたしと映画・南十字星」(27) 「オーストラリアの特攻隊」の続き 前週の金曜日の夕方、昭南港の入り口のあたりで、折からの南方特有の無風状態に、風待ちをしている一隻の現地人の帆船があった。 正規の日章旗をかかげているし、何等怪しいところはな…

 ●「続・知られざる日豪関係」(476)

「わたしと映画・南十字星」(26) 「オーストラリアの特攻隊」 何か大事件らしいということは、食事中の第七方面軍司令部の将校、高等文官全員に、すぐピンと感ぜられた。 何故と言えば、参謀部二課長の吉田大佐と、その高級参謀桑原中佐の二人が、食事な…

 ●「続・知られざる日豪関係」(475)

「わたしと映画・南十字星」(25) 「オーストラリアの特攻隊」 途中で、腹にこたえるような銃聲を聞いた。 萬事が終った。 これで良いのか、まだ何か打つ手はなかったか、私は正しかったろうかという思いが、いつまでも私を苦しめた。 この事件は、それほ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(474)

「わたしと映画・南十字星」(24) 「オーストラリアの特攻隊」 十人の射手が、射撃の萬全を期するために、銃を銃架の砂嚢にのせ狭窄射撃の姿勢をとっている。 距離はわずか一米。 目かくしの白布の、丁度両眼の中間に標的の○印が書いてある。 指揮官の軍…

 ●「続・知られざる日豪関係」(473)

「わたしと映画・南十字星」(23) 「斬首」への疑問は、その後もわたしの心に残り続けた。 そこで、この道に詳しい何人かの知人に、わたしの疑問をぶつけてみた。 何年か経って、「これがネタ本ではないか」と、友人の一人からコピーを手渡される。 それ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(472)

「わたしと映画・南十字星」(22) 繰り返しになるが、 『参謀部は斬首を宣告、田宮はせめて銃殺をと嘆願するが聞き入れられない。 肩を落とす田宮に、ペイジは「君の手で天国に送って欲しい」。 「日本武士道の、斬る者と斬られる者との間柄は敵ではない…

 ●「続・知られざる日豪関係」(471)

「わたしと映画・南十字星」(21) 田宮は、せめて銃殺にと嘆願するが聞き入れられない。 ペイジたちに斬首を伝える田宮の心は重い。 「日本武士道の、斬る者と斬られる者との間柄は敵ではない。 互に信頼し合う人間関係なのだ。」 言いおえて、肩を落した…

 ●「続・知られざる日豪関係」(470)

「わたしと映画・南十字星」(20) 田宮がなんとか彼らの生命を助けようとしている時、ペイジは彼らが第1次攻撃で艦船爆破した容疑によって中国人達が捕まり拷問の末、近く処刑されることを知り、激しく動揺する。 そして、いよいよ裁判の日が来た。 検察…

 ●「続・知られざる日豪関係」(469)

「わたしと映画・南十字星」(19) 日本憲兵隊は、10人の捕虜に対し、訊問を始める。 その主任通訳にあたったのが田宮である。 田宮はその指揮官、ペイジ大尉の人間的な魅力に引かれる。 しかし、訊問はなかなかはかどらない。 「それでは拷問だ!」とい…

 ●「続・知られざる日豪関係」(468)

「わたしと映画・南十字星」(18) 翌年、この「Zフォース」と呼ばれる特別部隊は、再度シンガポール攻撃を試みる。 隊員達は”SB”と呼ばれる特別な潜航兵器の訓練を受けていた。 ”リマウ(虎)”と名付けられた第2次攻撃隊は、潜水艦にそのSBを積み込んで…

 ●「続・知られざる日豪関係」(467)

「わたしと映画・南十字星」(17) 軍政監部の通訳である田宮稔は、なんとか軍の横暴を抑えようとする。 そんな時、昭南港に停泊していた七隻の日本艦船が爆破される事件が起きた。 軍はその犯人捜査に躍起となる。 憲兵隊は抗日ゲリラの破壊工作とみて、…

 ●「続・知られざる日豪関係」(466)

「わたしと映画・南十字星」(16) 「オーストラリア(正確には、豪英混成)の特別攻撃隊」については、オーストラリアの作家で、ジャーナリストだったRONALD McKIE(1909年12月11日〜1991年5月2日)が「THE HEROES」で詳細に書いているが、…

 ●「続・知られざる日豪関係」(465)

「わたしと映画・南十字星」(15) 日本側は田宮稔(通訳)を中村敦夫が演じ、立花法務官(少佐)に北大路欣也、そのほか志垣太郎、藤岡琢也、坂上二郎、小松方正、鈴木瑞穂、内藤武敏、草薙幸二郎、辻馬長らベテラン男優陣に対し、女優陣では、宝塚歌劇団…

 ●「続・知られざる日豪関係」(464)

「わたしと映画・南十字星」(14) 11月より12月までシドニーとシンガポールでロケ撮影、1月より東京で合同セット撮影、4月完成する。 また実際に”Zメン”が使用した「幸福丸」(日本漁船=改造してクレイト号)は、現在もオーストラリアで観光船とし…

 ●「続・知られざる日豪関係」(463)

「わたしと映画・南十字星」(13) (保存してあった「パンフレット」に戻る)。 この企画を3年前から秘かにあたためていた持丸社長は、1昨年11月シドニーを訪れ、オーストラリア政府の映画委員会にこの企画を持ち込んだ処、政府は、文化、芸術面での…

 ●「続・知られざる日豪関係」(462)

「わたしと映画・南十字星」(12) 「持丸氏との対立」 しばらくの期間、持丸氏との間に距離を置いた。 つまり、関係を絶った。 やがて、持丸氏から申し入れが・・・。 「オーストラリアで上映する映画に関しては、この部分をカットして、違うシーンを取り…

 ●「続・知られざる日豪関係」(461)

「わたしと映画・南十字星」(11) 「持丸氏との対立」 前回書いた『参謀部は斬首を宣告、田宮はせめて銃殺をと嘆願するが聞き入れられない。 肩を落とす田宮に、ペイジは「君の手で天国に送って欲しい」と話す。』という部分に、わたしは、持丸氏に激しく…