2008-04-01から1ヶ月間の記事一覧

 ●「続・知られざる日豪関係」(398)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「それは豊島一が佐世保海兵団に入団し、海軍四等水兵として第五十七期普通科にいた『信号術練習生』時代の記念写真の一つであろう、どこかの神社の境内に立ち水兵服姿にラッ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(397)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「だがしかし、実際に写真を手にしたとき、私には初めて見たという感動はまったくなかった。 それどころか、『ああ、豊島さんですね』と、つい口をついて出そうになるほど、…

 ●「続・知られざる日豪関係」(396)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「やや尖った顎と、すっきりした眉、かなり茶色がかっていたのではないかと思われる瞳、比較的薄い唇、鋭角的だがソフトな印象を与える鼻。 顔のつくりを見るかぎりでは、優…

 ●「続・知られざる日豪関係」(395)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「写真のほとんどは、色褪せてセピア色になった、軍服姿のものである。 佐世保海兵団時代の、つばのないペンネント(注:海軍の水兵帽についているリボンのようなもので、帝…

 ●「続・知られざる日豪関係」(394)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「世話好き、面倒見がよい、という性格は高原氏のいう南忠男の人物像と一致している。 家庭内においても、また家庭外の集団の中においても、かれには多分にこの世話好きとい…

 ●「続・知られざる日豪関係」(393)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「昌三氏の言葉と落ち着いた態度に、捕虜云々の感情的なしこりはなさそうだな、と私は安堵感を覚えた。 しかし昌三氏の母ツヤ子さんは、一が尋常小学校高等科を出る頃に、徳…

 ●「続・知られざる日豪関係」(392)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「その日、功代さんの夫、豊島昌三氏は、仕事を休んで私が行くのを待っていてくれた。 『そうですか、あなたからの問い合わせだったんですか。 実は、役場のほうからも、叔父…

 ●「続・知られざる日豪関係」(391)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「驚いたのは私だけではない。 国鉄職員の男性も、声をかけた当の本人も、ただ互いに顔を見合わせながら、唖然とするだけだった。 私は驚きと興奮をなんとか抑えながら、身を…

 ●「続・知られざる日豪関係」(390)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「急に声をかけられた彼女は、 『はあ、私も豊島ですが・・・・・』 と、ちょっと戸惑った様子だった。 だが、すぐに気を取り直したように私の方へ向き直ると、控え目な口調…

 ●「続・知られざる日豪関係」(389)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「考え込む横顔をうかがいながら、私はまだはじまらぬ翌日からの取材が、徒労に終わるのではないかと不安でならなかった。 ところが、しばらく沈黙が続いたのち、かれはふい…

 ●「続・知られざる日豪関係」(388)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「そういわれて、かれはしげしげと私をみていたが、 『そうやねえ、豊島ゆう名前はあの辺にゃ沢山あるからなあ。それだけじゃあわからんのう。 いったいどこの豊島さんやろか…

 ●「続・知られざる日豪関係」(387)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「時計の針はやがて六時をまわり、電車が駅に止まるたびに乗ってくる通勤客、降りてゆく通勤客が私たちの横の通路を騒々しく往き来する。 そして、電車がどこかの駅に止まっ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(386)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「『あの方もたしか高瀬町から来ているはずですから、ひょっとしたら旅館を知っているかもしれません、ちょっとお待ち下さい』 女の子に呼ばれてカウンターのところへやって…

 ●「続・知られざる日豪関係」(385)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「断られることを承知のうえで入っていったのだが、その気休めのつもりで開いたドアが、実はそれからはじまる奇妙な、まったく奇妙としかいいようのない偶然の連続の、第一歩…

 ●「続・知られざる日豪関係」(384)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「ところがこれが、大きな誤算だった。 豊島一が生まれた勝間地区を含め高瀬町は、近隣の町村併合により現在一万七千ほどの人口となっているが、このうち豊島の姓は、電話番…

 ●「続・知られざる日豪関係」(383)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「電話を切ってから、この悲観的な短い答に、私はこれ以上追いかけることを、なかばあきらめかけていた。 豊島一の両親、そして兄徳繁はすでに死亡している。 しかしまったく…

 ●「続・知られざる日豪関係」(382)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「女性職員は、『ちょっとお待ち下さい』と、受話器から離れ、しばらく何かを調べていたようだったが、ふたたび電話に出ると、 『調べるのに時間がかかりそうで、今日中には…

 ●「続・知られざる日豪関係」(381)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「『戸主 兄』の『豊島徳繁様』あてにである。 もし豊島一が生きておれば、今頃は六十代前半の年になるはずだ。 ならば『母 コマツ』はともかく、『兄 徳繁』はまだ元気でい…

 ●「続・知られざる日豪関係」(380)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「(注:このあとも、中野不二男さんは、「南忠男と名乗る人物」が、本当に「豊島一であるかどうか」の確認作業を続けられる。 多くの時間をかけ、血のにじむような努力を重…

 ●「続・知られざる日豪関係」(379)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「千百四名のBコンパウンド捕虜のうち、その六十数パーセントの人員を失っては、もう一斉蜂起どころではない。 満足な武器を持たぬ籠の中の鳥が敵を制圧するためには、死を覚…

 ●「続・知られざる日豪関係」(378)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「このときラムゼイ少佐が提示した、ヘイ収容所への移動対象となった捕虜のリストには、約七百名の名前が掲げられていた。 逮捕時に作成された捕虜名簿をもとに作られたリス…

 ●「続・知られざる日豪関係」(377)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「つまり、かりに文書にされた決起計画書のようなものがあったとすれば、その中の決行予定期日のみが、『Xデー』として空白にされていたということだ。 そしてある日突然、こ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(376)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「またシドニーでボーマン元准尉が私に語ったように、マツモトの取り調べのあと、情報部はその予定期日を割り出そうと躍起になって情報蒐集を行なったが、ついにわからなかっ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(375)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「そして南自身、あるいは他の者によるその口コミの過程で、物陰にいたマツモトに運悪く立ち聞きされてしまい、これが計画発覚の端緒になってしまった。 マツモトの密告によ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(374)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「収容所外で行われる労役作業に出た作業班の捕虜らから、外部の地理などを聞き出したり、監視兵らの士気を探り出すなど、情報収集に励んでいたものと思われる。 また、この…

 ●「続・知られざる日豪関係」(373)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「だからかりにそれまで南が何らかの計画を持っていたとしても、このD1コンパウンドからBコンパウンドへ移動したことにより、これまでの計画は完全に水泡に帰していたと思わ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(372)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「それだけではない。 面積が広くなったことにより複数の監視塔の視界に入り、非常に監視されやすくなっているのだ。 むろんそれがこのD1コンパウンドからBコンパウンドへの…

 ●「続・知られざる日豪関係」(371)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「監視兵の人数や交替時間、携帯武器、また張りめぐらされた鉄条網の状態などは、かなりな程度把握していたかもしれない。 少なくともそうした状況把握の努力はしていたであ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(370)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「そしてこの暴動計画発覚のはるか以前、一九四三年の中ごろから南忠男は、前述の『人間の記録』で引用したように、収容所に入ってくる新参捕虜たち、たとえば川崎賢一氏など…

 ●「続・知られざる日豪関係」(369)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「ではカウラ収容所の暴動事件とは、どのように計画され、実行に移されていったのか。 いや、もっと直接的にいうならば、最古参強硬派捕虜として、またリーダーとして所内の…