2007-01-01から1年間の記事一覧

 ●「続・知られざる日豪関係」(277)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「作戦の目的は、英、米、蘭、豪の海上兵力と、米軍の増援航空兵力がダーウィンを基地として東インド洋に進出する公算があるので、先手を取ってここを攻撃し、またすでに…

 ●「続・知られざる日豪関係」(276)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「それに大阪の高原氏も、報告書の中にある『商船員』が、かれら自身であることに間違いないだろうとはいうものの、『オーバーオールを着た男』には会っていないので、これも…

 ●「続・知られざる日豪関係」(275)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「私は『南忠男』になる前の南忠男について、もっと知りたかった。 南の持つ奇妙な魅力に、惹かれはじめていたのかもしれない。 そうして私は、南忠男自身の、歴史のフィルム…

 ●「続・知られざる日豪関係」(274)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「南は民間人の中では、かなり評判が良かったようだ。 それになにより、ブルームの『元日本兵』のみならず、こうして日本へ帰ってきた元潜水夫らの記憶にもはっきりと残って…

 ●「続・知られざる日豪関係」(273)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「『アラフラ海の真珠』(小川平著、あゆみ出版刊)という、かつてオーストラリアで採貝潜水夫をしていた人々の苦労話や体験談をまとめた本の中に、オーストラリアでの抑留生…

 ●「続・知られざる日豪関係」(272)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「目的は不明ではあるが、大学受験生さながらに、毎晩消灯まで英語学習に励んでいたという南の姿に、私は私自身の受験時代を思い出した。 そしてそこに、軍人南忠男というわ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(271)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「また、高原氏は南が相当熱心に英語学習に励んでいたという。 私はこれまで、ブルームのアンザイの話から、南は捕虜になる前から英語ができたが、ここへ来てまたさらに学習…

 ●「続・知られざる日豪関係」(270)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「それにオーストラリア人の監視兵に話しかけては、会話の練習などもしていたようです。 はじめはほとんど駄目だったんですが、どんどん上手になりましたよ』 ここで南が手に…

 ●「続・知られざる日豪関係」(269)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「あの頃南君は、なぜかわれわれに溶け込めなかったようですね。 非常に明るい性格の男でしたが、その反面どことなく孤独な感じもありました。 それからかれはよく英語を勉強…

 ●「続・知られざる日豪関係」(268)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「作業の手配といい、米食切り替えの要求といい、たしかにかなり面倒見のよい性格だったようだ。 ただこれほど五人の世話役的な存在だった南だが、なんとなく違和感があり、…

 ●「続・知られざる日豪関係」(267)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「あの頃所内にはいろんな作業があり、そうした作業参加の手配をするのも、いつもかれが中心になって率先してやってくれていましたよ。 食事の改善を要求してくれたのもかれ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(266)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「いやおそらくは、矢尽き刀折れ長い彷徨の末に逮捕された他の捕虜に比べ、緒戦当時に比較的短時間で捕虜となった零戦パイロットとしては、ほかの誰よりも重圧を感じていたこ…

 ●「続・知られざる日豪関係」(265)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「そして、右目上の裂傷で顔が少し引きつっていたが、南は縫合手術をしたあとだといい、抜糸はすでにすんでいたように記憶しているという。 高原氏たちはここへ来るまで、国…

 ●「続・知られざる日豪関係」(264)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「この高原氏ら『軍属』のたどった道と、南忠男のそれとではかなり違っていたものと思われる。 ヘイ収容所で、高原氏ら五人は第六キャンプに入れられた。 五人はその中で、商…

 ●「続・知られざる日豪関係」(263)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「捕虜名簿にある高原氏は、一九二〇年(大正九年)の生まれで、四人のうちでは最も若く、また一九一九年生まれの南忠男とは一番年齢が近い。 その高原氏から見た南とは、ど…

 ●「続・知られざる日豪関係」(262)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「ただし前に書いたように、PWJM 110、004のイノ・ハルヨシだけは、南同様暴動事件で死亡し、未帰還となっている。 濠洲カウラ会には、必ずしも暴動関係の全帰還者が入…

 ●「続・知られざる日豪関係」(261)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「偽名で知り合い、偽名のまま、ともに捕虜という烙印を押されて生活したあの青春時代は、今もはっきりとかれらの中に尾を引いているようだ。 この濠洲カウラ会会員名簿と総…

 ●「続・知られざる日豪関係」(260)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「第三章 海鷲は舞い降りたか (以後は、「関連部分」を抜粋してお伝えする) 一九八一年十二月、オーストラリア国内において必要と思われる現地調査、資料蒐集をすべて終え…

 ●「続・知らざる日豪関係」(259)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「これまで、『知られざる日豪関係』というテーマで、中野不二男さんの書かれた『カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか』を紹介してきた。 『これで、もう十分…

 ●「続・知らざる日豪関係」(258)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「たとえそれらが偽名でも、さして重要な問題ではない。 偽名で出会い、偽名で呼び合い、偽名で死んでいった者たちなのだから。 本名を知ろうとしたところでその術はないし…

 ●「続・知らざる日豪関係」(257)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「このときかれは、高知県の一病院事務局長森木勝でもなければカウラ会会長でもない、三十九年前の日本兵捕虜『木下義則』になっていたのに違いない。 南忠男が偽名であった…

 ●「続・知らざる日豪関係」(256)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「式典が終わると、かれは右足をかばいながら、墓標の間を縫って芝生の上を歩きはじめた。 幅二五センチ、長さ一八メートル、厚さ五センチほどのコンクリートの台座が、二メ…

 ●「続・知らざる日豪関係」(255)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「地獄さながらの戦場に負傷あるいは病に倒れ、連合軍に救出され手厚い看護によって蘇生し、濠洲各地の病院を転々とし、このカウラにたどりついたのでございました。 ・・・…

 ●「続・知らざる日豪関係」(254)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「曲が終わり、やや合間をおいてふたたび静寂がもどったとき、森木氏は右足をやや引き摺るように、列の中から進み出た。 四十年前にニューギニア戦線で銃弾を受けた右足は、…

 ●「続・知らざる日豪関係」(253)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「緩やかなスロープをなす手入れのゆき届いた芝生に、コンクリートの墓が直線的に並ぶ。 錆びた鉄の色や硝煙の臭いを連想させる戦争の文字とは裏腹に、いかにも近代的な、暗…

 ●「続・知らざる日豪関係」(252)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「町の中央から北へのびる道を五分ほど走ると、大牧草地帯の真ん中に、ポプラとユーカリの木に囲まれた墓地がある。 その一郭が、日本人戦争墓地だった。 バスが止まり、圧搾…

 ●「続・知らざる日豪関係」(251)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「森木氏は、あの二十代前半の事件へと思いを馳せていたのだろう。 かれの頭の中には、当時の南忠男の表情や動作が浮かんでいたに違いない。 私はそれが羨ましかった。南の表…

 ●「続・知らざる日豪関係」(250)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「『そうです。それから南さんが突撃ラッパを吹き、それを合図に私たちは走り出しました。 途中でまた突撃ラッパが聞えましたが、それっきりでした。 あれが南さんの最後だっ…

 ●「続・知らざる日豪関係」(249)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「心の中で暴動に反対しながらも、ついには賛成してしまったこと、自分と同じく暴動に反対で、帝国軍人としての意識との間に板挟みとなり悩む捕虜仲間に、『軍人として立派に…

 ●「続・知らざる日豪関係」(248)

〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜 「強硬派、穏健派にかかわらず、同じ日本人捕虜として『貴様らそれでも軍人か』は、共通の、そして決定的な弱点だったようだ。 この帝国軍人として『生キテ虜囚ノ辱(はずか…