テレビ・ワ−ク(1)

 友人の一人で、国営放送局の花形ディレクタ−のジムから、「テレビの特別番組の収録があるので、よかったら見学に来ないか!」という電話を受けたのは、日ごとに春の気配が増すころだった。
 夏のクリケットに対し、冬のスポ−ツと言われるオ−ストラリア独特のフットボ−ル試合が、いよいよ終盤に突入しようとしていた。
 ABCのテレビ・スタジオは、私の家から車で5〜6分のところにある。好奇心旺盛な?私としては、この機会を見逃す手はない。ジムの誘いに乗って、ABCのスタジオまで出かけた。
 到着するのが早すぎたせいか、ジムの姿はまだない。
 収録予定のスタジオに行くと、照度計を持ったライト・マンが、セットのテ−ブルといすの周辺を小刻みに動き回っている。
 時折、照度計の目盛りを読み上げながら、「もっと明るく!少し明る過ぎる!」などと大声を張り上げていた。