「牛乳配達の馬車」の続き

  

 そっとドアを開けて、外へ出た。ひずめの音には違いないのだが、それにしてはずいぶん“遠慮がち”だ。奇妙な明かりとともに、その音は次第に近づいてくる。時折、ギ−ッときしむような音。ひずめの響きは、時々中断する。
 やはり馬だった。小さな木の箱をたくさん積んだ荷馬車を引いていた。
 真夜中だというのに、なぜかカウボ−イ・ハットをかぶった若者が一人、馬と一緒に歩いている。
 この男は、一切声を発しない。だが、馬はそれぞれの家の前で、きちんと止まる。すると、若者は木箱から大きな牛乳瓶を取り出して、その家の門の傍らの牛乳入れや低い塀の上にそっと置く。その間、馬はじっとおとなしく待っている。
 空き瓶を手に持にした男が戻ってくると、何の指図も受けないのに、馬はまた歩き出す。 奇妙な明かりの正体は、この荷馬車の黄色い電球だった。