「山本康久氏の証言」から(37)

 
 夜間なので、正に、「闇に鉄砲」。いくら撃っても、当たらない。
 30発ぐらい撃ったところ、「当たらぬ鉄砲も、数打ちゃ当たる(下手な鉄砲も数うてば中る)」で、一発が商船に命中して火災を起こした。
 商船は、シドニーの基地に向けて、「by shell on fire」と打電した。
 災に包まれた商船から、乗員たちは、ボートを下ろして脱出を図る。
 停止したままの商船に、魚雷は次々と命中した。
 最後は沈めたが、ボートで逃れようとする乗員には、「武士の情け」で、一切攻撃を加えることはなかった。
 翌日、このボートが、「無事シドニーに帰港したこと」を、内地のラジオで傍受した者から、われわれに知らされた・・・。