「山本康久氏の証言」から(36)

 
  艦長は、「シドニーの基地も、すでに気づいている。いい加減に、追撃をやめようではないか」と言い出した。
「冗談じゃない。わたしの目は、特別な訓練を受けている(高雄の航海士のとき、毎晩30分ぐらいずつ、真っ暗な海上を見る訓練を繰り返した)ので、救援に出撃する敵の駆逐艦が5千メートルの距離からこちらを発見するとしたら、わたしの方は1万メートル手前で敵艦を見つけることができる。
 敵艦より早く、わたしが見つけるから大丈夫だ」と言って、引き続きオーストラリアの商船を追いかけた。
 30分以上も追走したが、魚雷を発射しようとすると尻を向けられ、なかなかよい射点に着けない。
 仕方がないので、砲術長を呼び上げて、「撃て」と命令した・・・。