● 作家の描いた「特殊潜航艇」(30)


「大きな石をコンクリートで接着させ、塗り固めた、ありふれた岸壁である。
 高さ二メートルに近いその岸壁は、十個位の大きな破片と、無数の小片とに分散して、今なお波に洗われていた。
 私は、その破壊された岸壁に伴勝久の肌を感じていた。
 ─── 伴、貴様、こんな所にいたのか ───
 伴は確かにそこにいた。
 大きな破片や小さな細片に分散して、そこに波をかむっていた。」
(注:日本の潜水艦による砲撃跡の写真を見たことがある。本に掲載されたその写真には、被弾したごく普通の住宅が写っていたと記憶している)。