● 作家の描いた「特殊潜航艇」(74)

「他の隊員全部が戦死しているので、彼としては記事になることに抵抗があったのであろう。
 翌日、私は彼の写真を撮らなければならなかった。
 川田の近くに土柱(どちゅう)といって風蝕による奇景がある。
 酒巻がそこを案内してくれたので、そこで写真をとり、写真の裏に署名をもらった。
 岐阜に帰ってから出社してデスクに話をすると、すぐに書け、ということである。
 私は友情と信義にもとると抵抗を感じたが、この記録は残す価値があると考えていたので、あえて六百行ほどの記事を書いた。」