●「続・知らざる日豪関係」(32)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「カウラ暴動事件の、生き残りの一人である元陸軍曹長森木勝氏は、著書『カウラ出撃』の中で、南忠男のことをこう書いている。
『真っ先に進軍ラッパを吹き鳴らしながら突進した南兵曹は、銃弾に胸を貫通され即死した。
 彼にはふさわしい最後である。
 南兵曹はまったく過去を語らない。
 彼がどこで捕虜になったか、本当の階級は何であるか、何県人であるか、私には全然語ろうともしないし、彼の過去を知っている人々にも出会わなかった。
 ただ態度や言葉のはしばしから、彼が海軍のパイロットであったことだけは間違いない。』」