●「続・知らざる日豪関係」(34)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「日本軍の飛行機隊は攻撃に際し、『生還を期して戦果は期待できず』としていたというエピソードを、過去に何度か聞いたことがある。
 だが、本当に生還を期さなかったのだろうか。
 同世代の人間が、三十数年前にそれほどまでに、今のわれわれと異なっていたとは思えない。
 いや、思いたくなかった。
 捕虜となるには、さまざまな過程があったはずである。
『自決』する時間も、また余力もなく、連合軍の手に落ちた者、負傷により人事不省のままに捕虜となってしまった者、みな結果的には戦場から離れ、生きのびたのだ。」