〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜
「日本軍の飛行機隊は攻撃に際し、『生還を期して戦果は期待できず』としていたというエピソードを、過去に何度か聞いたことがある。
だが、本当に生還を期さなかったのだろうか。
同世代の人間が、三十数年前にそれほどまでに、今のわれわれと異なっていたとは思えない。
いや、思いたくなかった。
捕虜となるには、さまざまな過程があったはずである。
『自決』する時間も、また余力もなく、連合軍の手に落ちた者、負傷により人事不省のままに捕虜となってしまった者、みな結果的には戦場から離れ、生きのびたのだ。」