●「続・知らざる日豪関係」(35)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「南忠男の場合はどうだったのだろう。
 なぜかれは捕虜となり、『生きのびてしまった』のか。
 そして、脱走を試みるという『生』へのベクトルを持ちながら、なぜ、集団暴動の主役として、突撃ラッパを吹いたのだろうか。
 ブルームで脱走未遂の話を聞いて以来、私は南忠男が死に至るまでの過程を追うことにより、当時の同世代の若者がどう考え、どう行動したかを知ることができるのではないか、そしてそれが、私の中に積もり積もった疑問に対し、解答を与えてくれるのではないか、と思った。
 陽光あふれるシドニーの町でそう考えたとき、私の調査ははじまっていた。」