●「続・知らざる日豪関係」(129)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「(中略)そうして時間を過ごしていると、突然男の子の一人が泣きじゃくるのが聞こえ、なにげなくそちらを見ると、ブッシュの中からいかつい顔をした大柄のジャパニー(日本人)が、枝をかき分けて出て来るところだった。
 アロイシャスはブンニップ(オーストラリアの伝説上の人喰い野獣)にでも出喰わしたかのように仰天し、泣き叫ぶ男の子もおいたまま、うちへとんで帰って来た。
 そして日頃から部族の強者とされていた男マティアスにそのことを告げ、かれの手を引張って、そのジャパニーを見たところへ引き返した。
 わめき散らすアロイシャスの話に、さすがにマティアスも少々不安になったが、とにかく彼女について行った。
 そして木陰から一マイルほどのところへ来たとき、2人はそのジャパニーにばったりと出会ってしまった。」