●「続・知らざる日豪関係」(128)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ところが、『ああ、あの日ね』と気軽な口調ではじめた老人の話は、そんな私の思いを簡単に吹き飛ばす、まさにずばり核心に触れるものだった。
 そして老人がひとこと話すたびにまわりから、いやそうではない、あのときはこうだったと横槍が入り、しまいには私そっちのけで、かれらだけの熱気を帯びた議論になってしまった。
 かれらの話す内容から、枝葉を除いて総合すると、どうやら二つほどのエピソードに分けられるようだった。
 まず私が面白いと思ったものとしては、次のような話がある。
『ある日、アボリジニーの女たち数人が子供らを連れて、蜂の巣を取りにブッシュの中へと入って行った。」