●「続・知らざる日豪関係」(158)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「ラヴディ収容所やヘイ収容所が民間人中心の収容施設だったのに対し、カウラは軍人だけの捕虜収容所である。
 もし脱走を計画し、実行するならば、このカウラ収容所のほうがはるかに心強い協力者を得られただろう。
 それに九月といえば、オーストラリア大陸南部では日照時間も短く、夜間の脱走には都合が良い時期である。
 したがってこの拘置の理由も『脱走未遂』ではないかと思うのだが、その前に、『裁判係争中』と書いてあるのが、どうも気にかかる。
 かりにこれが脱走未遂だったとするならば、それは明らかに違反行為であり、違反者は収容所内の捕虜なのだから、なにもいまさら裁判沙汰にする必要などはないように思う。」