●「続・知られざる日豪関係」(400)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「夕刻、高知市の隣町伊野町に着くと、予約しておいた旅館で、私は森木氏と会った。
 そして再会の挨拶もそこそこに、テーブルの上に昌三氏と一子さん(注:著者の中野さんは、ここを訪れる前に、豊島の婚約者だった宮谷一子さんと会っている)から借りてきた写真を、ひとまとめにしておくと、いかがですか、とかれの顔をのぞきこんだ。
 これが南に間違いない、と思ってはいたものの、まだ100パーセントの自信があったわけではない。
 なんといっても私は、南自身の顔を見たことのない、第三者なのだ。
 いくら証拠材料や判断材料を集め、確信を持ったとしても、それはあくまで『限りなく100パーセントに近い』可能性であり、断定を支える100パーセントにはなり得ない。
 ここから先はどうしても、南の顔を知っている人の手に、委ねなくてはならないのだ。」