●「続・知られざる日豪関係」(402)

 〜中野不二男さんの「カウラの突撃ラッパ 零戦パイロットは なぜ死んだか」より〜


「だが、二、三十枚もある写真の束を、一枚一枚めくり、何枚目かにきたとき、
『あっ、これだ、南君だ。
 そうです、この写真は南君ですよ。間違いないですよ』
 と明るい表情にもどり、手にした写真を、私のほうに向けた。
 それは、宮谷一子さんから借りた信号兵時代の写真で、豊島が微笑を浮かべて立っているものである。
 森木氏がはじめに見た何枚かの写真は、いずれも軍人らしく唇を真一文字に結んだもので、『ひょうきんな印象』とはつながらなかったのだろう。
 それに、これらの写真では、右目の上に裂傷の跡がないことや、多少体型が違うことから、即座には判断できなかったのかもしれない。」