●「続・知られざる日豪関係」(539)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


「訳者あとがき」の続き


 では沿岸監視員とは何か。
 今でも多くの日本人には耳なれぬ言葉であろうが、ミュージカルの名作「南太平洋」を見た人は、ヒロインの美人看護婦に失恋して、沿岸監視員を志願した中年のフランス人農園主(映画ではロッサノ・ブラッチが演じた)を思い出す向きもあろう。
 ミュージカルでは、農園主が米軍の若い中尉と数人の原住民を同行して、日本軍の後方に潜入、無線機で大艦隊の出動を通報して連合軍勝利の糸口を作る。
 中尉は戦死し、農園主は生還してヒロインと結ばれるハッピーエンドで終る。
 沿岸監視員たちの果した役割と功績は、大体ドラマ通りと考えてよいが、監視員の主力はオーストラリアおよび英国系の民間人と軍人で、フランス人が登場した例はない点が史実と異なる。