●「続・知られざる日豪関係」(553)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


「まえがき」の続き


 戦後建設されたこの町は人口一万三〇〇〇を数えるが、戦争中はジャングルの一角にすぎなかったのに今は冷房付きのホテルもあるし、スーパーマーケットも開かれ、ロンドンやニューヨークのように、屋根の上に回転灯をつけたタクシーが走りまわっていた。
 しかし一歩町を出るか、他の島々を訪れれば、風物は往時とほとんど変っていないことが分かろう。
 人跡稀な大ジャングルが広がり、地理に通じた現住民の案内がなくては歩けない。
 そしてそこまで行けば、われわれは戦争の傷痕にいたる所で出会うことになる。
 ムンダの海岸から一〇〇ヤードも入ると、錆びたブルドーザー、壊れた日本軍の砲台、米空軍戦闘機の翼片が見つかった。