●「続・知られざる日豪関係」(661)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 せっかく来たのにと失望した二人は、フィジー人のケレメンデの小屋に行き、ベッドに入った。
 ジャックは八月七日金曜日の夜明けごろに目を覚まして、それきり眠れなくなってしまった。
 しばらく寝返りをうってみたが役に立たず、とうとうパットやケレメンデのじゃまにならないようそっと家を抜け出し、ゴールドリッジの頂上に近い草地に座って、暗やみに目をこらした。
 間もなく東の空に最初のあけぼのの光りが一すじあらわれ、やがて彼の眼下を海岸に向って広がるルンガ平地の大部分を見分けられるようになった。
 どうやら曇り日になりそうだったが、まだかなり暗い。
 六時を二、三分すぎたころ不意に海の方から一連の閃光が輝やいた。
 つづいて遠くで砲声がして、閃光と爆音がさらに激しくなり、砲弾が岸に向って炸裂を始めた。