●「続・知られざる日豪関係」(727)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”ステーキと卵”の続き


 息苦しい待避壕の中でこうした報告に聞きいった人々は敵中深く潜んでいるこの男の声がいつも沈着で冷静なのに驚くのだった。
 彼らはリードの通信の簡潔な表現にひきつけられた。
 かくて、「爆撃機四〇機、貴地へ向う」という警報は、ガダルカナルでは差し迫った危険を予告する一種のキャッチフレーズになった。
 リードの通報が簡潔だったのは、自衛上の意味もあった。
 彼は日本軍の無電方向探知をいつも心配していたが、それを免れるには送信時間が短いほどよかった。
 リードの声がレシーバーに入ってくると、海兵隊の電信員は急いで書きとってヒュー・マッケンジーに手渡す。