●「続・知られざる日豪関係」(744)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 彼らは伝道所のベランダに落ちついたが、四人の将校は背のまっすぐな椅子にきちんと腰かけ、クラーク神父とマイクル修道士がデッキチェアにくつろいでいるのが不釣合いに見えた。
 石本は英政庁はもはや存在しないが、もし伝道者たちが日本の軍法に従い、敵との接触を断つならばとどまってもよい、と説明した。
 彼はそれから武器を求めて伝道所周辺の捜索を命じた。
 神父は二二口径銃のほか何もないとうけあったが、彼らが最初に入った建物に、真新しい猟銃の弾丸が二箱置いてあるのに気づいた時は、恐ろしさで気絶しそうになった。
 もう暗くなりかけていたので、彼はやっとの思いでその箱を僧服のひだの中にかくしおおせた。