●「続・知られざる日豪関係」(743)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 三本目の銃は比較的役に立たない二二口径で、これはわざと隠さないでおいた。
 日本軍は彼が銃を全然持っていないといっても信じないだろうと思ったからである。
 こうしたやり方は七月一〇日に試されることになる。
 その日の日没少し前、兵士を詰めこんだ日本軍の大きな沿岸舟艇が現われ、岸の近くに投錨した。
 クラーク神父は伝道所の鐘を鳴らし、子供たちにはじっとお祈りをつづけるようにと言った。
 それから黒い僧服を着ると、マウルから来たマイクル修道士とともに海岸に向った。
 一隻のボートが四人の日本軍将校と、屈強な水兵の一団をのせてすぐに到着した。
 指揮官は自分を石本だと名乗り、”新政府”のことで相談に来たのだと言った。