●「続・知られざる日豪関係」(772)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”よき羊飼い”


 彼は理論倒れの幕僚タイプではなく、実行肌の男だったから、さっさと見切りをつけると自前で救出作戦を計画した。
 すぐにマライタ島へ無電で群島行政長官の自家用船ラマダ号をまわしてもらうよう依頼し、その運航を前地区行政官で今は海軍少尉としてKEN局に配属されていたディック・ホートンに頼んだ。
 一〇月三日の夕暮、誰の許可も得ないで、ラマダ号はルンガ泊地をすべり出て西へ向った。
 すべてうまく行けば、船は“東京急行”がやってくる前にエスペランス岬をまわり、明け方にタンガラレに着くはずであった。
 疎開する人人を拾い上げたら、海兵隊の飛行機に援護してもらって昼間に帰ってくる計画だった。