●「続・知られざる日豪関係」(800)
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”新しい目と耳”
夜明けは遠くない。
彼はキーナンを残し、確実な水路を求めて二〇〇ヤード南へ漕いで行ったが、サンゴ礁に砕ける白い波の線はずっと続いていた。
その間に時間はどんどん過ぎて行く。
あと一時間で夜明けになる。
それまでに岸に上がって隠れ場所を探す必要があった。
彼らは日本軍がこの島に配置されているかどうかは分からなかったが、敵の領分に何百マイルも入りこんでいることは知っていた。
だから見つかる危険を冒してはならなかった。