●「続・知られざる日豪関係」(803)

「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 ”新しい目と耳”


 六時一五分前、ゴムボートもふくめて全装備を隠し終えた彼らが、自身も大木の下へすべりこんだのと同時に、早朝哨戒に飛来した川西飛行艇一機が大きな爆音を残して上空を通りすぎていった。
 グランパス号調理室の心尽しの朝食を静かにすませると、二人は小さなテントを広げ、しばらく休むことにした。
 一週間狭苦しい潜水艦内で暮らして何となく体調を悪くしていた二人は、この夜の労働ですっかり参ってしまった。
 二人は簡易ベッドに倒れこむと、まるで酔いつぶれたように眠った。
 衣服はまだ濡れていたが、そんなことは気にならなかった。