●「続・知られざる日豪関係」(804)
「─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
”新しい目と耳”
何が来てもかまわない。
たとえ全帝国陸軍が浜をめざして行進してきても仕方がないという気分だった。
彼らは最初の二日間は食べて寝るだけですごしたが、それからそろそろと海岸の偵察を始めた。
現住民にも日本人にも、誰にも会わなかった。
時々、川西飛行艇が上空を飛ぶ以外は、戦争ははるか遠くのできごとに思えた。
一〇月一六日、二人は海岸から一マイル奥に入ったムンディムンディ農園に着いた。
以前はコプラ取引の中心地だったのに、今はひどく荒れ果てていた。
彼らは空家になっている農園の事務所に入り、ムンディムンディ川を約一マイルさかのぼった隠し場所に、少しずつ荷物を運んでいった。