●「続・知られざる日豪関係」(835)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


 実力行使


 わたしは歩いて家に帰って、銃をとり、それから射ちます。
 かならず射ち殺しますよ」
 伝道師のお説教としては異例の言い方だったが、効果は十分にあった。
 ケサは走り去り、神父はもはやそれ以上噂を気にする必要はなくなった。
 デイル・レスリーの到着はいっそう彼を戦争にまきこむこととなった。
 実は、レスリーは神父のしょいこんだ飛行士の二人目だった。
 もう一人は撃墜された戦闘機パイロットのダグラス・グロー少尉で、二、三日前にここに来たのだった。
 タンガラレに来た人のすべてがそうであったように、レスリーはたちまちこの地の持つ感覚的な美しさのとりこになってしまった。