●「続・知られざる日豪関係」(836)
「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より
実力行使
サラサラと風にゆれる樹々、きらめくサンゴ海、はるかな暗礁に砕ける波。
空をよぎって行きかう飛行機は、小さな銀色の点となり、何光年もかなたにあるように思えるのだった。
「ねえ」とある日彼はクラーク神父に言った。
「もしわたしが生きていることさえ母に知らせられたら、戦争が終るまでここにいてもかまわないと思いますね」
飛行士たちがのんびりウッドハウスの小説を読んだりしている間に、新しい事件がエメリー・ド・クラークを司祭から戦士へすっかり変えようとしていた。
一〇月一八日の日曜日、現住民の代表が彼を訪ね、日本との戦闘に参加させてくれと頼んだのである。