●「続・知られざる日豪関係」(879)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


  “東京急行”を撃滅せよ


 アレササ・ビシリとソロモン・ヒツの二人は、その集落で残っていた数少ない現住民だった。
 二、三週間前、何かを見るとすぐ射ちたがるアメリカ軍戦闘機のパイロットたちが集落を機銃掃射したので、住民の多くは山の中に逃げこんだのである。
 軍艦が午後五時頃伝道所の沖に投錨し、そのうちの一隻が烽火をあげたのは七時近くだったらしい。
 上陸作戦が始まり、二人の少年は一晩中、小舟が部隊や物資を運ぶのを見守っていた。
 あまり夢中になって、偵察隊が近づいてくるのにも気づかなかった。
 たちまち二人はつかまって少し英語の話せる将校のところへ連れてゆかれ、どこに白人がいるか、と聞かれた。
 少年はみんな行ってしまったと答えた。