●「続・知られざる日豪関係」(886)

「 ─ソロモン諜報戦─ 南太平洋の勇者たち ウォルター・ロード/秦 郁彦訳」より


  “東京急行”を撃滅せよ


 マールはこの土地と現住民の方言を知っている、暗号も分るし、それに冒険好きな性格であるから最適だ、病院の仕事もビルアよりもセギの方が忙しいはずだ、というのがケネディならではの計算であった。
 一二月三日午前一時、申し出を受け入れた彼女は出発した。
 ニュ―ジョージア島の西端沖には日本軍の往来が増えていたので、前よりもはるかに危険でびくびくするようなカヌー旅行になった。
 ムンダを避けるために、彼女の一行はホーソン海峡を通って北をまわり、それから東へ進んでマロボ礁湖に入ったが、途中で敵の舟艇をかわしたり、ブロブコ島にある日本軍前哨基地のそばをすりぬけたりもした。
 おとなしそうな日本兵の歩哨が、小屋からとび出してきて、カヌーが通るのをもの珍しそうに見ていたが、それだけで満足して戻って行った。