南風が冷たい

  


 オ−ストラリアを一言で言えば、「壮大なる田舎」「日本とは万事に対照的な国」と言えるだろう。赤道をはさんで、南と北、オ−ストラリアの国土の面積は、日本の21倍、人口密度1キロ平方メ−トル当たり2人以下、(日本は280人)。
 季節は逆で、日本の冬はオ−ストラリアでは、夏ということになる。
 日本は水に恵まれているが、オーストラリアは、世界で最も乾燥した国だ。
 一方、日本に乏しい鉱物やエネルギ−資源は、オ−ストラリアには豊富にある。
 日本には、中央政府は一つ。オ−ストラリアは、六つの州と二つの特別地域から成る連邦国家である。それぞれが独立国家の存在で、学校の義務教育の年限から、鉄道のレ−ルの幅やビ−ルのアルコ−ル濃度まで違う。
 オ−ストラリアは、世界最大の島大陸で、国土は日本の21倍あるのに人口は1、350万人。「広大な国土に、わずかな人間」が住んでいることになる。だから、牧場一つの大きさが鳥取県や東京都、大阪府全体、本州と同じ大きさのところがある。
 オーストラリアを東西に横断すると、列車で3泊4日、飛行機では4時間かかる。(ホンコン−東京間に相当?)
 もっと驚いたのは、オ−ストラリアの奥地に住むこどもたちは、「海を見るのが一生の夢」だという。
 2DKが独身者のスペ−スということからか、すべての点で日本人と発想が異なる。100年先、200年先の完成を目標に教会の建設資金を集めに来たのには、正直言って驚いた。寄付を募りに来た本人が、教会完成まで生きていることは考えられないからだ。「万事におおらか」ということか。
 週休二日制はとっくに実現されていた。年に最低3週間の、それも連続で取得する休暇が義務づけられている。
 飛行機の出発が9時間遅れても平然として待つ国民。「安全のためなら当然だ」と言う。この国営航空に遭遇した私には,直ぐには理解できなかった。(キャセイ航空がエンジントラブルで遅れたときには、乗客に迷惑料として10万円が支払われたという)。
 風邪を引いても、「風邪に効く薬はない」として当然の如く休みを取る労働者とそれを認める雇用者・社会。
 ゴルフは、「おしゃべり満載」ののんびりプレ−。
 あの有名なシドニ−のオペラハウス(貝殻状の建物)の着工は、1959年。完成したのは1973年10月。実に、15年もかかった。
 車のクラクションは、めったに鳴らさない。うっかり鳴らすと、それが病院や学校周辺だったら罰金を取られる。「クラクションを鳴らす余裕があるのは、ブレ−キを踏む時間があるはず」という論理だ。どこかの国では、クラクションは、警笛ではなく「歩行者も、ほかの車も引っ込め」という脅しに思えて仕方がない。
 その一方で、決められたことはきちんと守る。単一民族国家ではなく、「多民族国家・人種のルツボ」のせいだろうか。
 家の隣の公園で元気に遊んでいた子どもたちが、夕方5時になると潮が引くように姿を消す。
 休日など、子どもたちは朝8時前に外へ出て遊んではならないとされている。(欧米では「夕方6時以降は、犬をほえさせるな」という規則があるとも聞いた)。
 夜8時になると、子どもたちは自ら寝室にこもる。「8時だよ、全員集合!」と呼びかけられても、ふらふらと出てくることはない。(もっとも、その時間にテレビを見ることは許されていないし、日本のテレビが見られるはずがないので「当然」か・・・)。