オ−ストラリア人気質  

 

 
 先日、調べ物があって、オ−ストラリアのある政府機関を訪れた。そこで借りた本を帰りの電車の中で読んでいるうちに、私は思わぬところで“オ−ストラリア”に再会し、すっかりうれしくなってしまった。
 車内がかなり混んでいたため片手で本を支えていたのだが、電車が揺れたはずみで、一気に最終ペ−ジまでめくれてしまった。その裏表紙には、本の「貸し出しカ−ド」が張られていたのだが・・・。「返却日欄」には、なんと「2月29日」と記入されていた。
 ちなみに、今年は“うるう年”ではない。では、どうして? 
 私が本を借りたのが「2月15日」。貸し出し期間は「2週間」。つまり、単純に「2月15日に14日を足すと、2月29日」となる。係の人が「忙しさのあまり、ついうっかり?」。
 いや、オ−ストラリアの人々なら誰もがやりそうなことなのだ。
 ただ、何事にもこだわらないおおらかな“オ−ストラリア人気質”の一端をのぞかせたに過ぎない。 
 私がオ−ストラリアで暮らし始めたころのことだ。車を買おうと販売店に行ったものの、店員の姿が見えない。だが、店の奥の方では何か物音がしており、時折人の叫び声も聞こえてくる。
 恐る恐る“音”のする方向へ行ってみると、数人の男たちがテレビの前にくぎづけになっていた。
「すみません。車のことでお尋ねしたいんですが」と、私・・・。
「テレビが終わってからにしない? それよりも、一緒にテレビ見ようよ・・・」。
 テレビでは、ボクシングの世界タイトル・マッチを放送していた。