「お喋り」の続き

 

 
  腰を傷めてから、もう20年以上もゴルフをしたことがない。だから、バブル以降の日本のゴルフ場がどうなっているかはさっぱり分からない。だが、一時期、日本では、ゴルフ場が「混雑の代名詞」になっていた時代があった。
 そのころ、オ−ストラリアのゴルフ場では、“のんびり”という言葉がぴったりの光景が見られた。
 ティ−ショットが打ち終わった瞬間から、フェアウエ−でのお喋りが始まる。
 間もなくして、先行組は全員ホ−ルアウト。グリ−ン上から、プレ−ヤ−の姿は消えた。
「前があいたぞ。もう打ってもいいんじゃない?」
 話しが一区切りついたところで、私はパ−トナ−に声をかけた。
 一緒に回っている一人は、ショ−トアイアンを手にしてはいるものの一向にアドレスに移る気配がない。
「何を言ってるんだ。おれたちの話し、まだ済んでないじゃないか。
 ところでさあ、あのあとが大変だったんだよ。実は、ジョ−のやつがさあ・・・。」
 とにかく、長話が続くのだ。
 このお喋りは、ミスショットしたボ−ルを探そうと、みんなでブッシュをかき分けているときでも同じだ。ボ−ルを探しながら、ペチャクチャペチャクチャ・・・。
 後ろから、次の組みのプレ−ヤ−が打ってくる心配など一切ないからだろう。
 ゴルフとは縁のない会話を楽しみながら、マイぺ−スでカ−トを引き、「笑いカワセミが鳴き出した」と言ってはプレ−を中断してその行方を追い、「へびがいた」と言えば、その声の主のところへ駆け寄って、みんなで遠巻きになってのぞき込む。
 あるオ−ストラリア人が、こんな話しをしていた。
「月曜日は、ロストボ−ルがたくさん見つかるんだ。」
「どうして?」
「日曜日にはね、ここのゴルフ場で日本人がよくコンペをやるからさ。多分、彼らはボ−ルよりも速く歩いているんじゃないのかね・・・。」
「・・・」

(注) ゴルフについて思い出したこと。
1 帰国してゴルフをしたとき、みんなから「プレ−が遅い」と叱られた。「ゴルフって、苦痛を楽しむものですか?」と、思わず聞き返したくなってしまった。だが、“混雑する日本のゴルフ事情”を考えれば、これは当然私が悪い・・・。
2 「ブ−ビ−賞」は、彼の国では一番成績の悪いプレ−ヤ−に与えられるのに、日本では、どうして「下から2番目」なのでしょうか?
3 ウッドを一本も持たないお年寄りとプレ−したことがあった。「年を取ったので、ウッドで打つのは難しいから」と話していた。これは、許される?
4 私が1番ウッドを持っているのを見て、「あなたはプロですか?」と、何人もの人々から質問された。聞けば、「素人は3番ウッドからですよ」とのこと。
 1番ウッドを持っている人は、ほとんど見かけることはなかった。
5 日本人グル−プがコンペの後、パブリックのゴルフ場の狭い食堂(サンドイッチやソフトドリンクを売っているだけのお店)を独占して、表彰式をしている光景をよく目にした。
 よその国の、それもパブリックのゴルフ場で、なぜ日本式の表彰式をしなければならないのでしょう・・・。
6 メルボルンの金持ちは、「ゴルフよりもスカッシュを楽しむ」と、親しくしていた若者から聞いた。