「パブ」の続きの続き  

 



 パブは、以前は夕方の6時までしか営業していなかった。だから、勤めが終わる午後5時前後からサラリ−マンたちが一気に押し寄せ、「蜂の巣をつついたよう」な状態になる。
 パブで一杯ひっかけた人々が、閉店時間の6時になると一斉にハンドルを握って家路を急ぐ。当然、交通渋滞が起こる。そのせいかどうか定かではないが、夜の10時まで営業するようになった。
 パブでは、ほとんどの人がビ−ルを飲む。コップ一杯で80円(当時)足らず。これを互いにおごり合うならわしがあるから、二人で行けば最低2杯。5人で行けば5杯。10人で行けば10杯も飲むことになる。日本酒と同等、いやそれ以上にアルコ−ル分の強いこの国のビ−ルを、ふつうはカウンタ−の前などで立ったまま飲まなければならないのだ。
 お酒にはめっぽう強いオ−ストラリアの猛者ども、いや紳士たちを相手に、私はダウンすることなく過ごすことができた。このときばかりは、「飲んべえ」に生んでくれた親に感謝したい気持ちになった。
 郊外のパブに行くと、近くのコインランドリ−に洗濯ものを放り込んで、これが仕上がるまでグイグイやっている客がいる。そうこうしているうちに、隣の客との会話がはずみ過ぎて洗濯もののことは記憶の彼方に去ってしまうのだろう。真っ赤な顔をしたおっさんが、乾燥機のお世話になる必要がないほどカラカラになって洗濯機に絡みついている洗濯ものを、あたりをはばかるようにそっと取り込む光景を何度も見た。
 パブには、「ボトル・ショップ」の看板を掲げて酒類を販売しているコ−ナ−のあるお店もある。だから、用心深い人は洗濯ものを放り込むなり、ボトル・ショップに出かけて冷えた缶ビ−ルを買い求め、洗濯の終わるのをジッと待つ。「頭のいい」パブの愛好者?
 とにかく、この国にも、いろいろな酔っ払いがいる。