「パブ」のさらに続き  

 


 パブに入って驚くのは、耳をつんざくような人の声だ。特に、夕方はものすごい。「ウォ−ン」と、パブの建物全体を揺るがすように反響する。こんな騒音の中でお喋りをするのだから、“会話を楽しむ”ことなど、とても無理だ。いきおい、みんなが大声で話す。
 とにかく、「この上なくすさまじい話し声」なのだ。いくら“賑やかなところが好き”な私でも、しらふだったら、ものの5分も耐えられなかったに違いない。
 やはり、勤めが終わって家に帰るまでの時間を、十分に満喫したいのだろう。この解放感とアルコ−ルとが、お喋り好きの人々の舌の回転をますますスム−ズにさせる。
 オ−ストラリア全国で、パブは6、000軒以上(当時)あった。このパブも、日曜日は休業となる。メルボルンの州都・ウ゛ィクトリア州は非常に保守的で、“日曜開店”などを口にする人々はほとんどいなかった。
 ところが、シドニ−のあるニュ−・サウス・ウエルズ州になると、ちょっと話しが違ってくる。この州では、1969年11月に、パブの“日曜開店”の是非をめぐって住民投票が行われた。だが、その結果は“想定外”に終わった。有権者240万人、投票総数200万票。このうち日曜開店に賛成するもの42%、反対するもの58%だった。「日曜日ぐらいは、胃袋を休ませてあげなさい」という意見?が多かったのだ。
 だが、日曜日でもお酒の飲めるところはある。酒類の販売を許可されたレストラン(前に、「限られたレストラン」と書いたが、それはこの「ライセンスド・レストラン」のこと)や航空機・船など乗り物の中だ。こういうところでは、どこでもアルコ−ルが飲める。なにしろ、小さな遊覧船の中でもお酒を売っているバ−が必ずある。飲んべえにとっては、まことに都合よくできているのだ。
 「オ−ストラリア万歳!」・・・。

 (注) 思い出したこと
 昼間からアルコ−ル濃度の高いビ−ルを飲むのだから、当然午後は仕事にならない。職場間をめぐり歩く「お喋りタイム」となる。正確には覚えていないが、サラリ−マンの出勤時間はかなり早く、昼食を取る時間も午後1時過ぎだったと記憶している。一方で、彼らの午前中の仕事の集中ぶりには驚いた。無駄なお喋りは一切せず、仕事に没頭する。
 夕方パブで過ごした人々の車に出合うのは怖かった。お尻を左右に振リながら走る酔っ払い運転の車が堂々とまかり通っていた・・・。