「真夏]の夜

 


 メルボルンを語るとき、「天気」について触れておかなければならない。ロンドンには「一日に四季がある」と言われるが、メルボルンも同じで、日ごとに四季がある。
 クリスマスを間近に控え、近くの公園でチャリティ−のキャンドル・サ−ビスが行われた。
 オ−ストラリア人の親友が、「夜なので、コ−トを持って行った方がいいよ」と、アドバイスしてくれた。だが、「いくら夜だといっても、真夏のことじゃないか。なんてオ−バ−な・・・」。私は、この親友の言葉を無視して、コ−トは持たないまま、軽装で出かけた。
 やがて、公園でのチャリティ−は、市の音楽隊による演奏が一段落し、市長がチャリティ−に参加した市民たちにお礼の挨拶を始めた。この市長の挨拶の最中、私は寒さに震えていた。
 南風が強い。公園だから、風を遮るものなど見当たらない。南極からの冷たい風が、容赦なく私の体から熱を奪っていく。さすがに、みんな土地っ子で慣れているのか、コ−トを着たり、毛布にくるまったりしている。“寒さに対する備え”は万全だ。
 市長の挨拶が済んで、みんなとクリスマス・キャロルを歌いながら、私は相変わらず貧乏揺すりをして寒さと闘っていた。
 帰り際、隣の席に座っていた親友が、一緒に参加した仲間たちにこう言った。
「今夜は、オ−ストラリアには珍しい地震があったようだ。それも、ずいぶん長く続いていたね・・・」。