ある日の公園で・・・

 ある土曜日のこと、家の隣にある公園を我が家のダイニング・キッチンから眺めていた。
 ダリアやバラ、ゼラニュ−ム、パンジ−など、色とりどりの花が咲いている。ひときわ背の高いパ−ム・ツリ−やみずみずしい白い肌の輝く樹齢何十年というガム・ツリ−が鮮明な長い影を緑の芝生に落としている。
 クリケットやブランコ、滑り台などで遊ぶ子どもたちの元気な声が、草花の香りとともに家の中に飛び込んでくる。
 ふかふかとした芝生の上では、よちよち歩きの幼い子が小鳥を追いかけている。小鳥は、子どもが近づくとヒョイと逃げ、またすぐ子どものそばに止まる。まるで、鬼ごっこをしているようだ。小鳥たちが、積極的に子どもの遊び相手をしているようにも見える。この国の鳥は、人が近づいても決して逃げようとしない。それどころか、車がやってきてもなかなか道を譲らない。ドライバ−が鳴らすクラクションの音や追い払う声を聞いてやっと飛び立つほど厚かましい?いや、人間に慣れているのだ。
 この昼下がりののどかな公園に、新しく一家族がやってきた。若い夫婦に幼い子どもが3人。上の子は4歳ぐらい。下の子は双子らしく、やっと歩き始めたばかりのようだ。この一家は、ベンチやブランコのある一角に陣取った。余談になるが、この国では妊娠促進剤がごく一般的に使われているので、双子は珍しくない。1971年の6月には、シド−で29歳の母親が九つ子を生んで世界中の話題になったが、これも「妊娠促進剤によるもの」と言われている。
 公園の若い母親は、傍らのベンチに腰を下ろすとやおらタバコを取り出し、持ってきた新聞を広げた。この国では、日曜日は新聞はお休みで、その分土曜日の新聞は分厚くなる。車や土地、家の広告やらスポ−ツの特集などで日本の新聞の一週間分ぐらいのぺ−ジ数がある。だから、少々の時間ではとても目が通し切れないほど読みごたえがある。