「ある日の公園で・・・」の続き

 私の家の隣にある公園に子連れでやって来た若いカップルの母親は、日本なら一週間分にも相当する分厚い新聞を丹念に読み始めた。それも、タバコをくゆらせながら・・・。
 一方、父親はというと、母親とは正反対にてんてこまいの忙しさ。3人の子どもをかわるがわるブランコや滑り台に乗せてやったりミルクや冷たい飲み物を与えたりして、まさに“八面六ぴ、孤軍奮闘”の活躍ぶりだ。あげくの果ては、小さい方の一人を抱き上げて木陰のベンチでおむつを取り替えている。その手際のいいこと・・・。
 まあ、ここまでは目をつむることにしよう。だが、次に見た光景は、どんなに譲歩しようとしても男の端くれとして見逃すことはできなかった。
 双子のうちの一人は、木陰で「手当て中」と言ったが、もう一方の子はチャンス到来とばかり母親に向かってヨチヨチと歩き始めた。子どもにとって、父親よりも母親の方が好きなのは万国共通のようだ。「危ない足取りだなあ」と思っていると・・・。
 母親は、何本目かのタバコに火を付け、相変わらず両足を組んだポ−ズで新聞の活字を追いかけている。公園の風景の中で、私の視線は、この母親と子どもだけに集中していた。
 両手を上げて、母親に向かって突進する子・・・。ところが、5〜6歩駆け出したところで、足がもつれてスッテンコロリン。打どころが悪かったのか、火が付いたよう泣き出した。その泣き声は、我が家にもはっきりと聞こえた。
「いよいよ母親の出番だな」私はそう思った。ところが、そうではなかった・・・。