学園祭で

 1972年11月4日の土曜日に、私の息子が通う小学校で「学園祭」が開かれた。創立50周年を祝うこの年の学園祭は、例年に比べるとはるかに盛大なものとなった。
 学園祭の一番の目的は、完成したばかりの学校の図書室に本を贈る資金を集めることにあった。「50周年」といっても、お偉方の長いあいさつなどのややこしい行事はほとんどなく、“大規模なバザ−”と言ったところだ。
 実は、学園祭が開かれる前にも、さまざまな形で「資金集め」が行われていた。
 たとえば、小学校の校庭を会場にした“ペット・ショ−”。ペットは、ほとんどの家で飼われている。だから、それぞれの家庭ご自慢のペットをご披露する「コンク−ル」を開催したのだ。一定の参加料を取り、その一部を賞品代に充てて残りのお金はそっくり“図書資金”にする。
 この資金作りには、私の妻も協力した。「折り紙レッスンの先生」を務めたのである。マザ−ズ・クラブの会長をしている親友の奥さん(私の息子と同級生のお母さん)が場所を提供し、一人50セント(当時のお金で200円)の授業料?で「折り紙教室」を開いた。出席者は15人で、総収入は7ドル50セント。この中から私の妻への謝礼(1ドルほどの記念のスプ−ン代)を引いて、純益は日本円にして2、500円程度。わずかな金額だが、こういう催しを繰り返し開いて、少しずつ、確実に資金を増やすのだ。
 お昼には、それぞれが持ち寄った手作りのサンドイッチなどを食べながら、ワイワイガヤガヤ。「それは楽しかった」と、妻は話していた。
 ただし、折り紙を教えている間は汗のかき通しだったという。出席した母親の中には「よくもまあ、こんな奇妙な折り方をするものだ」と感心するほどの“ウルトラぶきっちょさん”がいたそうだ。